
「暗号資産を、個人ではなく”法人”で持ちたい」
そんな相談が増えています。では、ジョージアで法人口座を実際に開ける取引所はどこか。現地で一社ずつ試した私の答えをお話しします。
先日、資産運用をお任せいただいているお客様の「法人」で、暗号資産の口座を開こうとしました。
最初に当たったのが、世界的な大手取引所Bybit(バイビット)です。ところが、個人口座は作れても、法人アカウントは開けませんでした。取引所によって、法人を受け付けるかどうかは本当にバラバラなのです。
私はこの8年、ジョージアに通い続けてきました。TBC銀行やバンク・オブ・ジョージアで自分の足で口座を開き、トビリシでは日本語対応の会計事務所も構えています。その現場で一社ずつ確かめて、法人でも口座を開設できると分かったのが、今日お話しするWhiteBIT(ホワイトビット)とCryptal(クリプタル)の2社です。
今日はこの2社の中身を、都合のいいところだけでなく「税金の本当のところ」まで含めて、やさしくお話しします。
ジョージアで法人も開ける、2つの取引所
暗号資産の取引所と聞くと、「どこの国のルールにも縛られないあやしい場所」という印象を持っていませんか。数年前までは、正直その面もありました。
ところが今のジョージアでは、中央銀行(ジョージア国立銀行)の登録・ライセンスを受けた事業者が増えています。つまり「国のルールの下で営業している」取引所が選べる、ということです。
Virtual Asset Service Provider(暗号資産サービス提供事業者)の略。暗号資産の交換や保管を仕事にする事業者で、多くの国で登録制になっており、本人確認やマネーロンダリング対策が義務づけられます。
例えば、街の両替商が「誰でも勝手にやれる商売」から「役所に届け出て、怪しいお金の出入りを見張る義務のある商売」に格上げされた、というイメージです。利用者からすれば、ルールのある場所のほうが安心して使えます。
まず1社目、WhiteBITから。
もう1社が、トビリシ生まれのCryptalです。
ざっくり言えば、WhiteBITは「規模と法人対応」、Cryptalは「現地ラリとの入出金の速さ」。性格がはっきり違う2社です。暗号資産で一番こわいのは価格の上下よりも”預けた場所が消えること”ですから、どちらも国のルールの下にある、という点がまず安心材料になります。
暗号資産を「チャージして使う」カードはどうなっている?
お客様から一番「へえ」と言われるのが、カードの話です。暗号資産は「増やす」話ばかり注目されますが、私は「どう引き出して、どう使うか」という出口こそ大事だと考えています。
ここで2社の性格の違いが、また出ます。
例えば、WhiteBIT Novaは「財布にドルの代わりにUSDT(ドル連動の暗号資産)を入れたまま、レジでそのまま払える」感覚。Cryptalは逆に「カードでチャージして暗号資産を仕込む入口」。出口と入口、と覚えてください。
本題:ジョージア法人での「法人アカウント」
さて、ここが今日の本題です。冒頭でお話ししたとおり、取引所によって法人を受け付けるかどうかは違います。私が現地で確かめた限り、WhiteBITもCryptalも、法人(コーポレート)アカウントを開設できます。
そして私が拠点を置くジョージアは、そもそも法人を作ること自体が非常に軽い国です。現地で何社も設立のお手伝いをしてきましたが、短期間・低コストで、外国人でも株主・役員になれます。
なぜ、わざわざ法人で持つのか。理由をカードで整理します。
ただし──ここで必ず立ち止まってほしいのです。「法人にすれば必ずトクをする」わけではありません。むしろ逆のこともあります。次の税金の話が、この記事の一番大事なところです。
法人で取引したら、税金はどうなるのか
ジョージアの税制は、ちょっと独特です。順番に見ていきましょう。
まず個人の場合。ジョージアの税務上の居住者が、個人として暗号資産を売買して得た利益には、原則として税金がかかりません(0%)。2019年の財務省の見解で、暗号資産の売買は「仮想空間での取引=ジョージア国内を源泉とする所得ではない」と整理されたためです。保有期間や金額に関係なく非課税、とされています。
次に法人の場合。こちらは「エストニア型」と呼ばれる仕組みです。
利益が出た「その年」ではなく、利益を配当などで会社の外に出したときに初めて課税する仕組みです。会社に残して再投資している間は、法人税がかかりません。
例えば、畑で穫れた作物を蔵に入れている間は無税で、市場に売りに出して現金に換えた瞬間に税金がかかる、というイメージです。「貯めて増やす」には有利で、「どんどん引き出して使う」には向きません。
数字で言うと、おおよそこうなります。
ここで、勘のいい方はお気づきではないでしょうか。個人なら0%なのに、法人にしてすぐ利益を引き出すと、むしろ税負担が増えるということです。「海外法人=節税」と短絡するのは危険です。法人の器が活きるのは、あくまで「利益を会社に残して長く回す」場合だと、私は考えています。
そしてもうひとつ、日本の読者が絶対に外してはいけない論点があります。税金は「どこの国の制度か」ではなく「あなたがどこの国の居住者か」で決まる、ということです。日本に住む方は、原則として世界中の所得に日本の税金がかかります。さらに外国子会社合算税制(いわゆるタックスヘイブン対策税制)もあり、ジョージア法人の利益がそのまま日本で課税対象になり得ます。「ジョージアは0%だから無税」とは、残念ながらなりません。
だからこそ、思い込みで動く前に、ご自身の居住状況に即した設計が不可欠なのです。
・本記事は一般的な情報提供であり、税務・法務・投資の助言ではありません。私は税理士でも弁護士でもありません。実行前に必ず専門家にご相談ください。
・暗号資産の価格は大きく変動し、元本を割り込むリスクがあります。デリバティブはとくに損失が膨らみやすい商品です。
・法人アカウントの受け入れ可否・必要書類、カードの対応地域、ジョージアの税制・VASP規制は変更されることがあります。数字は執筆時点の目安で、最新の公式情報・現地の実務をご確認ください。
・日本居住者には全世界所得課税・外国子会社合算税制が及びます。「海外だから無税」という前提で設計しないでください。
私がもし、これから暗号資産の「置き場所」を本気で考えるなら、まずは個人口座で、国のルールの下にある取引所を使うところから始めます。非課税の個人のうちに土台をつくる、という順番です。
法人化は、資産規模が大きくなり「使わずに長く回す」局面に入ってから、居住地の税制とセットで検討します。器だけ先に作っても、使い方が伴わなければ意味がありません。そして、どの取引所が法人を受け付けるかは、冒頭のBybitのように実際にやってみないと分からない。だからこそ現地の実務が効いてきます。
根っこにあるのは、いつもと同じ私の考えです。資産を日本円だけに一極集中させておく時代は、もう終わったと確信しています。暗号資産もジョージア法人も、その”円以外の置き場所”を増やすための一手にすぎません。大事なのは、思い込みではなく、正しい制度の理解と現地の実務の上で分散することだと私は考えています。
関連サービス
出典
・WhiteBIT 公式発表「WhiteBIT、ジョージア国立銀行よりブローカーライセンスを取得」(2026年4月)/WhiteBIT 公式(サービス・WhiteBIT Nova・法人アカウント)
・Cryptal 公式(VASP登録・サービス内容)/Datawallet「Best Crypto Exchanges in Georgia 2026」(手数料・ラリ入出金・銘柄数)
・GeCrypto/Georgia Expats「ジョージアの暗号資産課税ガイド」(2026年更新)
・PYMNTS「Visa、WhiteBITと暗号資産対応デビットカードで提携」(2024年)
※法人対応・税率・制度・対応地域は変更され得ます。数字は執筆時点の目安です。
