Vol.1928:ジョージアの「売上1%課税」は全業種ではない―コンサルティングが対象外である理由と、誤申告の罰則

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埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

MLP INVESTOR COLUMN | GEORGIA TAX

「ジョージアで個人事業主になれば、どんな仕事でも売上の1%課税で済む」——そう理解しているジョージア移住者は少なくありません。しかし、これは制度の半分しか捉えていない理解です。年商の上限があり、そして対象外となる「業種」が明確に定められています。とりわけ誤解が多いのが「コンサルティング」です。本稿では、会計事務所の実務目線で制度を正確に整理します。

読了時間
約6分
対象読者
ジョージアでの個人事業主登録・法人化・移住を検討している方/すでに1%制度を利用している方
この記事で分かること
1%制度の正確な骨格/金額と業種の2つの制限/コンサルティングが対象外である理由/誤申告時の罰則と遡及課税リスク

「個人事業主になれば全部1%」という誤解

ジョージアへの移住者の間で税制が注目される最大の理由が、個人事業主(Individual Entrepreneur, IE)向けの「小規模事業者制度(Small Business Status)」です。この制度の下では、売上(ターンオーバー)に対してわずか1%の所得税で済みます。標準の個人所得税率が純利益に対して20%であることを考えれば、破格の水準です。

ところが、この制度を「個人事業主として登録さえすれば、どんな業種でも売上の1%で完結する」と誤解している方が非常に多いのが実情です。実際には、IE登録をしただけでは1%にはならず、別途「小規模事業者ステータス」の申請と承認が必要であり、さらに金額の上限と業種の制限という2つの重要な条件が存在します。まずは制度の骨格から正確に押さえていきましょう。

まず制度の骨格を正確に押さえる

制度は大きく2段階に分かれます。年商3万GEL未満の「マイクロ事業者(Micro Business)」は事業所得が非課税(0%)、そして年商50万GEL(およそ185,000米ドル/日本円で約2,800万円前後)までの「小規模事業者」が売上の1%です。ここで課税対象になるのは「純利益」ではなく「総売上」である点が特徴で、経費は控除できない代わりに税率が極端に低い、という設計になっています。

注意すべきは、この50万GELという上限を超えた場合の扱いです。年内に上限を超えると、その時点以降の税率は3%に引き上がります。そして、2年連続で上限を超過すると、翌々年の1月1日をもって小規模事業者ステータス自体が自動的に取り消されます。加えて、直近12か月の課税売上が10万GELを超えるとVAT(付加価値税・18%)の登録義務が生じる点、そして所得がゼロの月でも毎月の申告が必須である点も、実務上見落とされがちなポイントです。

見落とされる2つの制限──「金額」と「業種」

ここまでが「金額」に関する制限です。しかし、ジョージア移住者がより深刻に見落としているのが、もう一つの「業種」の制限です。ジョージア政府政令第415号(2010年12月29日、税法第88〜95条に基づく)は、小規模事業者制度の対象とならない活動と所得を明確にリスト化しています。

制度上、区別しておくべき2つのカテゴリーがあります。一つは、そもそもステータスが付与されない(あるいは取り消される)「禁止活動」。もう一つは、ステータスを保持していても、その所得は1%の対象にならず50万GELの計算にも含まれない「対象外所得」です。前者に該当する代表例には、ライセンス・許認可が必要な活動、両替(為替)業務、賭博(ギャンブル)、医療、建築(アーキテクト)、法務・公証、監査、そしてあらゆる種類のコンサルティング(税務コンサルタントを含む)があります。

なぜ「コンサルティング」は1%の対象外なのか

ここが本稿で最も強調したい論点です。ジョージア移住者が現地で個人事業を始める際、最も選ばれやすい業種の一つが「コンサルティング」です。しかしジョージアの制度上、コンサルティングは前述の政令415号のリストに含まれており、1%制度の対象外とされています。

コンサルティングが厄介なのは、単に「その売上だけ20%課税される」では済まない可能性がある点です。建設サービスのように“対象外所得”として切り出されるのではなく、“禁止活動”として扱われれば、制度そのものが取り消され、他の事業の売上まで20%課税に引き戻されるリスクがあります。

この違いは実務上とても重要です。例えば、2025年2月1日から「企業・団体・他の個人事業主向けの建設サービス」が制度の対象外に加えられましたが、これは“その建設所得だけ”が20%課税になるという扱いで、他の適格事業のステータスは維持されます。一方、コンサルティングや為替業務、建築士といった「禁止活動」に踏み込むと、その活動を行ったこと自体がステータス取り消しの理由になり得ます。「1%のつもりで始めたコンサル事業が、他の売上ごと20%課税の対象になる」——これが最悪のシナリオです。

誤って1%で申告していた場合、何が起きるか

では、コンサルティング売上を誤って1%で申告し続けていた場合、どうなるのか。税務当局(Revenue Service)が調査で活動区分を「対象外」または「禁止活動」と再分類すると、その所得は標準の20%(純利益=収入−立証可能な経費に対して)で課税し直されます。差額の本税がまず発生します。

これに加えて、ジョージア税法上の各種ペナルティが重なります。申告額の過少(アンダーステートメント)に対しては本税の最大50%の加算税(税法第275条)、未納税額には1日あたり0.05%の延滞利息(第272・274条/年率換算で約18%)、さらに申告書を提出していなかった月については1か月あたり100GELの過料が科され得ます。「1%で安く済ませていたつもり」が、遡って本税20%+加算税+延滞利息という形で跳ね返る構図です。低税率制度ほど、区分の誤りが後から大きなコストに転化しやすいのです。

グレーゾーンをどう扱うか──実務の勘所

もっとも、実務には一定のグレーゾーンが存在するのも事実です。活動が「ジョージア国家経済活動分類」上どのコードに区分されるか、また当局がその実態をどう解釈するかによって、扱いが分かれる領域があります。ライセンス不要の一般的な事業サポートが、どこまで「コンサルティング」と評価されるかは、契約内容・請求書の記載・実際の業務実態の総合判断になります。

だからこそ、「コンサルだけど大丈夫だと聞いた」「周りもやっている」という伝聞ベースで1%申告に踏み切るのは危険です。重要なのは、①自分の事業がどの活動区分に該当するか、②その所得が1%対象か・対象外か・禁止活動か、を登録前の段階で現地の実務に即して確認しておくことです。制度を正しく理解して使えば、ジョージアの1%課税は依然として世界的にも極めて強力な選択肢であることに変わりはありません。

⚠ 本稿は一般的な情報提供であり、個別の税務判断ではありません。税率・上限・対象活動・罰則は改正され得ます(例:建設サービスの扱いは2025年2月に変更)。ご自身の業種が制度対象か否かは、必ず登録前に現地の実務に基づいて確認してください。

💡 チェックの起点は「金額」より「業種」。年商50万GELの上限は多くの方に十分な余地がありますが、業種の壁は見落とすと遡及課税に直結します。コンサル・法務・監査・建築・医療・為替・ライセンス業は特に要確認です。

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出典・参考

・ジョージア税法(Tax Code of Georgia)第84・88〜95条
・ジョージア政府政令第415号「特別課税制度について」(2010年12月29日、2024年12月改正/建設サービスは2025年2月1日適用)
・Revenue Service of Georgia(ジョージア歳入庁)
・PwC “Worldwide Tax Summaries – Georgia”
・Andersen in Georgia/REVERA/Kreston Georgia/TPsolution 各解説(2024–2026)

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