
昨日のコラムで、ジョージアの「売上1%課税(Small Business Status)」は全業種ではないこと、そして誤申告には遡及課税リスクがあることを整理しました。ではその1%を実際に手に入れるには、政府への登録が要るのか。そして「1%で税を払っている=ジョージアに住む権利がある」のか――。結論から言えば、税制と在留資格はまったく別の窓口です。本稿では登録手順・居住ビザ・そして怠った場合の罰則までを、会計事務所の実務目線で続編として解説します。
目次
昨日の続き――「1%」は手に入れた。では”住む権利”は?
前回(Vol.1928:ジョージアの「売上1%課税」は全業種ではない)では、1%制度には「金額(年商50万GEL)」と「業種」という2つの壁があることをお伝えしました。今日はその一歩先――「制度を正しく使える業種だと分かった。では実際に始めるには何をすればいいのか」「税金が1%で済むなら、ビザや在留資格も付いてくるのか」という、移住検討者が必ずぶつかる3つの問いに答えます。
最初に全体像を示すと、ジョージアで個人事業主として生活するには、性質のまったく異なる3つの許可を、それぞれ別の窓口で揃える必要があります。①税(1%)=歳入庁、②就労(働く権利)=雇用支援庁、③居住(住む権利)=公共サービスホール/内務省系。この3つが「別物」であることを理解しないまま登録すると、後述する罰則に直結します。
そもそも「1%」を得るには政府登録が要る――2段階の手続き
まず税制部分です。答えは明確で、政府への登録は必須です。しかも一度きりの手続きではなく、窓口の異なる2段階を踏みます。個人事業主(Individual Entrepreneur, IE)として登録しただけでは1%にはならず、その後に別途「小規模事業者ステータス」を申請して承認を得る必要があります。
「個人事業主登録=1%」ではない。
1%は”申請して承認されて”初めて有効になる制度である。
Small Business Statusでは居住ビザは下りない――税制と在留資格は別物
ここが本稿最大の誤解ポイントです。1%課税は「税制上のステータス」であって、在留資格(居住ビザ)ではありません。実際、IE登録には居住許可が不要であることの裏返しとして、IE登録やステータス取得をしても、それだけでは「ジョージアに住み続ける権利」は一切生まれません。税務の窓口と、移民・在留の窓口は完全に分かれています。
では日本人はどうやって滞在しているのか。ジョージアは日本国籍者に対しビザなしで最長1年(365日)の滞在を認めています(1回の入国あたり)。多くの個人事業主はこの寛大なビザ免除を使って滞在しており、税制上は1%、滞在は「ビザ免除」という組み合わせで成立しているのが実態です。逆に言えば、1年を超えて腰を据えて住むなら、別途「在留資格」の取得が必要になります。
居住ビザはどうする――在留資格の主なルート
ビザ免除の1年を超えて居住するための代表的なルートは以下の通りです。ご自身の事業内容・資産状況によって最適解が変わります。
2026年3月の新制度――「就労許可(Right to Labour Activity)」が別途必要に
そしてここが、今ジョージア移住を考える人が最も見落としやすい最新論点です。2026年2月20日採択の政令第70号により、同年3月1日から「就労許可(Right to Labour Activity/Special Labour Activity Permit)」制度が新設されました。それ以前のジョージアには、そもそも外国人向けの正式な就労許可制度が存在しませんでした。
新制度では、永住・投資居住などを持たない外国人がジョージア国内で就労・フリーランス・事業を行う場合、原則としてこの就労許可が必要とされ、これには小規模事業者・マイクロ事業者ステータスのIEでジョージアに居住している人も含まれ得ます。手続きは2段階で、まず就労許可を取得し、その後(国内にいる場合は承認から10日以内に)労働居住許可を、国外からの場合は30日以内にD1ビザを申請する――という順序です。重要なのは、「一時的な居住許可を持っているだけでは、働く権利は認められなくなった」という点です。
ただし例外・緩和もあります。実務上、国外のクライアントだけを相手にする純粋なリモートワークは対象外とされる余地があり(ジョージアは非居住者の国外源泉所得に課税していません)、永住・投資居住の保持者も対象外です。さらに2026年4月の追加改正で運用が一部緩和されたとの解説もあり、自分の事業が就労許可を要するか否かは「活動内容・顧客が国内か国外か・居住状況」で判断が分かれます。移行期間として、3月1日時点で既にジョージアで事業を行っていた自営業者には一定の猶予(既登録者は2027年1月1日まで)が設けられています。
2026年3月以降、「会社やIEを登録すれば働ける・住める」
という従来の前提は崩れた。税・就労・居住は”三重の許可”になった。
怠ると何が起きるか――罰金・遡及・入国制限
では、これらの手続きを怠るとどうなるのか。ペナルティは「税務」「就労」「滞在」の3系統でそれぞれ発生します。
実務の勘所――「税・就労・居住」を最初に一本の線でつなぐ
ジョージアの1%課税が世界的にも極めて強力な制度であることは、前回述べたとおり変わりません。しかし2026年の一連の改正が示すのは、「税制の魅力」と「実際に住んで働けるか」は別々に設計しなければならないという現実です。1%の税だけを見て登録し、後から就労許可や在留資格でつまずくケースが、まさにこれから増えていく局面にあります。
重要なのは、登録に着手する前に、①自分の事業が1%の対象業種か、②その活動に就労許可が要るのか(国内顧客か・国外顧客か)、③1年を超えるならどの在留資格ルートを使うのか――を一本の線でつないで設計しておくことです。窓口も根拠法もバラバラな3つの制度を、時系列で組み立てておくことが、罰金と遡及を避ける最短ルートになります。
⚠ 本稿は一般的な情報提供であり、個別の税務・移民判断ではありません。ジョージアの労働移民法・外国人の法的地位に関する法・政令第70号(2026年3月1日施行、同年4月にも追加改正)は運用が流動的で、就労許可の対象・免除範囲・手数料・在留資格の要件は今後も変わり得ます。ご自身のケースが対象か否かは、必ず登録前に現地の最新実務に基づいて確認してください。
💡 起点は「3つの許可を、別々に、しかし同時に設計する」こと。税(1%)=歳入庁rs.ge/就労=雇用支援庁/居住=公共サービスホール・内務省系。窓口も根拠法も別です。特に2026年以降は「登録すれば働ける・住める」が通用しません。国外クライアントのみのリモートか、国内顧客を取るのかで必要手続きが大きく変わります。
弊社はジョージアで会計事務所を運営しています。
個人事業主(IE)登録・小規模事業者ステータス申請・就労許可・在留資格・銀行口座開設まで、
「税・就労・居住」を一本の線で実務サポートします。
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出典・参考
・前回コラム:Vol.1928:ジョージアの「売上1%課税」は全業種ではない
・ジョージア政令第70号(2026年2月20日採択/同年3月1日施行)
・ジョージア「労働移民法」および「外国人の法的地位に関する法」改正(2026年3月/4月)
・Revenue Service of Georgia(歳入庁 rs.ge)/National Agency of Public Registry(公共サービスホール)
・LEPL State Employment Support Agency(雇用支援庁)「Right to Labour Activity」
・U.S. Embassy in Georgia「New Work Permit Rules for Foreign Nationals(2026年3月)」
・ジョージア税法(Tax Code of Georgia)第84・88〜95条/第272・274・275条
・Andersen in Georgia/PB Services/Legalese Georgia/ExpatHub.GE 各解説(2025–2026)
