Vol.1929:Small Business Statusで居住ビザは下りない──登録手順と、2026年新設「就労許可」・罰則

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埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

MLP INVESTOR COLUMN|GEORGIA|TAX & VISA

昨日のコラムで、ジョージアの「売上1%課税(Small Business Status)」は全業種ではないこと、そして誤申告には遡及課税リスクがあることを整理しました。ではその1%を実際に手に入れるには、政府への登録が要るのか。そして「1%で税を払っている=ジョージアに住む権利がある」のか――。結論から言えば、税制と在留資格はまったく別の窓口です。本稿では登録手順・居住ビザ・そして怠った場合の罰則までを、会計事務所の実務目線で続編として解説します。

読了時間
約7分
対象読者
ジョージアで個人事業主登録・移住を検討中の方/すでに1%制度を利用し「住み続ける権利」を確認したい方
この記事で分かること
1%を得るための政府登録2ステップ/Small Business Statusと在留資格が別物である理由/居住ビザの主なルート/2026年3月新設「就労許可」/登録・申告を怠った場合の罰金・罰則

昨日の続き――「1%」は手に入れた。では”住む権利”は?

前回(Vol.1928:ジョージアの「売上1%課税」は全業種ではない)では、1%制度には「金額(年商50万GEL)」と「業種」という2つの壁があることをお伝えしました。今日はその一歩先――「制度を正しく使える業種だと分かった。では実際に始めるには何をすればいいのか」「税金が1%で済むなら、ビザや在留資格も付いてくるのか」という、移住検討者が必ずぶつかる3つの問いに答えます。

最初に全体像を示すと、ジョージアで個人事業主として生活するには、性質のまったく異なる3つの許可を、それぞれ別の窓口で揃える必要があります。①税(1%)=歳入庁、②就労(働く権利)=雇用支援庁、③居住(住む権利)=公共サービスホール/内務省系。この3つが「別物」であることを理解しないまま登録すると、後述する罰則に直結します。

そもそも「1%」を得るには政府登録が要る――2段階の手続き

まず税制部分です。答えは明確で、政府への登録は必須です。しかも一度きりの手続きではなく、窓口の異なる2段階を踏みます。個人事業主(Individual Entrepreneur, IE)として登録しただけでは1%にはならず、その後に別途「小規模事業者ステータス」を申請して承認を得る必要があります。

STEP 1/個人事業主(IE)登録:公共サービスホール(Public Service Hall=通称「正義の家」)
国家公文書登録機関(National Agency of Public Registry)に申請。必要なのは有効なパスポートとジョージア国内の登録住所で、外国人はジョージア国籍も居住許可もない状態で登録可能です。手続きは窓口で15〜30分程度、通常1営業日で完了し、国への手数料もごくわずかです。
STEP 2/歳入庁(Revenue Service)への登録+小規模事業者ステータス申請
IE登録後、歳入庁のポータル(rs.ge)に登録します。これは全事業者に義務づけられた手続きです。その上で小規模事業者ステータスを申請・承認されると1%が適用されます。ステータスの効力は「申請した翌月1日」から発生する点に注意が必要です。
登録後:毎月の申告が「義務」
承認されたら終わりではありません。rs.ge上で毎月の所得申告が必要で、これは売上がゼロの月でも省略できません。前回述べたとおり、この毎月申告こそが1%納税者にとって数少ない「罰則の入口」です。

「個人事業主登録=1%」ではない。
1%は”申請して承認されて”初めて有効になる制度である。

Small Business Statusでは居住ビザは下りない――税制と在留資格は別物

ここが本稿最大の誤解ポイントです。1%課税は「税制上のステータス」であって、在留資格(居住ビザ)ではありません。実際、IE登録には居住許可が不要であることの裏返しとして、IE登録やステータス取得をしても、それだけでは「ジョージアに住み続ける権利」は一切生まれません。税務の窓口と、移民・在留の窓口は完全に分かれています。

では日本人はどうやって滞在しているのか。ジョージアは日本国籍者に対しビザなしで最長1年(365日)の滞在を認めています(1回の入国あたり)。多くの個人事業主はこの寛大なビザ免除を使って滞在しており、税制上は1%、滞在は「ビザ免除」という組み合わせで成立しているのが実態です。逆に言えば、1年を超えて腰を据えて住むなら、別途「在留資格」の取得が必要になります。

居住ビザはどうする――在留資格の主なルート

ビザ免除の1年を超えて居住するための代表的なルートは以下の通りです。ご自身の事業内容・資産状況によって最適解が変わります。

① 就労(労働)居住許可:IEベースの王道ルート
個人事業主の事業活動を根拠に取得する、最も広く使われる在留資格です。従来は「年商5万GEL以上」という売上要件がありましたが、2026年4月の法改正でこの5万GEL要件は条文から削除されました。ただし後述の就労許可制度と連動するため、実務要件は流動的です。
② 不動産所有ベースの短期居住許可
ジョージア国内の不動産を所有することで申請できる在留資格です。取得のハードルは段階的に引き上げられており、2026年3月1日以降、対象不動産(1件以上の合計)の市場価値は15万米ドル超が要件です(従来は10万米ドル)。
③ IT専門職向け居住許可
IE登録したIT専門職向けの新しい在留資格。年収2.5万米ドル以上・実務経験2年以上・年間183日以上の滞在などが要件とされ、最長3年で付与される枠組みです。
④ 投資居住許可/永住
一定額以上の投資を根拠とする投資居住許可のほか、居住許可を6年連続で保持すると永住権の申請が可能になります。なお居住許可は概ね最長12か月で発行され、更新により最長5年まで延長できるのが一般的です。

2026年3月の新制度――「就労許可(Right to Labour Activity)」が別途必要に

そしてここが、今ジョージア移住を考える人が最も見落としやすい最新論点です。2026年2月20日採択の政令第70号により、同年3月1日から「就労許可(Right to Labour Activity/Special Labour Activity Permit)」制度が新設されました。それ以前のジョージアには、そもそも外国人向けの正式な就労許可制度が存在しませんでした。

新制度では、永住・投資居住などを持たない外国人がジョージア国内で就労・フリーランス・事業を行う場合、原則としてこの就労許可が必要とされ、これには小規模事業者・マイクロ事業者ステータスのIEでジョージアに居住している人も含まれ得ます。手続きは2段階で、まず就労許可を取得し、その後(国内にいる場合は承認から10日以内に)労働居住許可を、国外からの場合は30日以内にD1ビザを申請する――という順序です。重要なのは、「一時的な居住許可を持っているだけでは、働く権利は認められなくなった」という点です。

ただし例外・緩和もあります。実務上、国外のクライアントだけを相手にする純粋なリモートワークは対象外とされる余地があり(ジョージアは非居住者の国外源泉所得に課税していません)、永住・投資居住の保持者も対象外です。さらに2026年4月の追加改正で運用が一部緩和されたとの解説もあり、自分の事業が就労許可を要するか否かは「活動内容・顧客が国内か国外か・居住状況」で判断が分かれます。移行期間として、3月1日時点で既にジョージアで事業を行っていた自営業者には一定の猶予(既登録者は2027年1月1日まで)が設けられています。

2026年3月以降、「会社やIEを登録すれば働ける・住める」
という従来の前提は崩れた。税・就労・居住は”三重の許可”になった。

怠ると何が起きるか――罰金・遡及・入国制限

では、これらの手続きを怠るとどうなるのか。ペナルティは「税務」「就労」「滞在」の3系統でそれぞれ発生します。

滞在(オーバーステイ)を怠った場合
ビザ免除の365日を超えて滞在すると罰金が科されます。過料は2025年に大幅に引き上げられ、現在はおおむね500〜1,000GELとされます(従来は180〜360GEL)。さらに2025年10月には「不法滞在データベース」が導入され、悪質・長期の場合は入国禁止(entry ban)のリスクも伴います。管理強化の方向にある点は要注意です。
就労許可を怠った場合
就労許可(Right to Labour Activity)を持たずにジョージア国内で就労・事業を行うと、2,000GELの罰金が対象者(雇用主・被雇用者・自営業者)に科され得ます。在ジョージア米国大使館も同水準の過料を告知しています。
税務申告を怠った/誤った場合(前回の再掲)
毎月の申告を怠ると1か月あたり100GELの過料、過少申告には本税の最大50%の加算税、未納には1日0.05%(年率換算約18%)の延滞利息。さらに業種区分を誤れば標準税率20%への遡及課税に転じます。「1%のつもり」が最も高くつく典型例です。

実務の勘所――「税・就労・居住」を最初に一本の線でつなぐ

ジョージアの1%課税が世界的にも極めて強力な制度であることは、前回述べたとおり変わりません。しかし2026年の一連の改正が示すのは、「税制の魅力」と「実際に住んで働けるか」は別々に設計しなければならないという現実です。1%の税だけを見て登録し、後から就労許可や在留資格でつまずくケースが、まさにこれから増えていく局面にあります。

重要なのは、登録に着手する前に、①自分の事業が1%の対象業種か、②その活動に就労許可が要るのか(国内顧客か・国外顧客か)、③1年を超えるならどの在留資格ルートを使うのか――を一本の線でつないで設計しておくことです。窓口も根拠法もバラバラな3つの制度を、時系列で組み立てておくことが、罰金と遡及を避ける最短ルートになります。

⚠ 本稿は一般的な情報提供であり、個別の税務・移民判断ではありません。ジョージアの労働移民法・外国人の法的地位に関する法・政令第70号(2026年3月1日施行、同年4月にも追加改正)は運用が流動的で、就労許可の対象・免除範囲・手数料・在留資格の要件は今後も変わり得ます。ご自身のケースが対象か否かは、必ず登録前に現地の最新実務に基づいて確認してください。

💡 起点は「3つの許可を、別々に、しかし同時に設計する」こと。税(1%)=歳入庁rs.ge/就労=雇用支援庁/居住=公共サービスホール・内務省系。窓口も根拠法も別です。特に2026年以降は「登録すれば働ける・住める」が通用しません。国外クライアントのみのリモートか、国内顧客を取るのかで必要手続きが大きく変わります。

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出典・参考

・前回コラム:Vol.1928:ジョージアの「売上1%課税」は全業種ではない
・ジョージア政令第70号(2026年2月20日採択/同年3月1日施行)
・ジョージア「労働移民法」および「外国人の法的地位に関する法」改正(2026年3月/4月)
・Revenue Service of Georgia(歳入庁 rs.ge)/National Agency of Public Registry(公共サービスホール)
・LEPL State Employment Support Agency(雇用支援庁)「Right to Labour Activity」
・U.S. Embassy in Georgia「New Work Permit Rules for Foreign Nationals(2026年3月)」
・ジョージア税法(Tax Code of Georgia)第84・88〜95条/第272・274・275条
・Andersen in Georgia/PB Services/Legalese Georgia/ExpatHub.GE 各解説(2025–2026)

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