
MLP INVESTOR COLUMN|JAPAN・CRYPTO
2026年7月15日、参議院本会議で金商法改正案が可決・成立。ビットコインなど約105銘柄が、株式や債券と同じ「金融商品」に正式に格上げされました。税率は最大55%から20%へ──ただし、この恩恵を受けられない取引が、はっきりと線引きされています。今日はその「線の内側と外側」を数字で整理します。
| 読了時間 | 約8分 |
| 対象読者 | 暗号資産を保有中・検討中の方/国内取引所と海外取引所を併用している方/2028年の税制改正に備えたい方 |
| この記事で分かること | 7月15日成立の金商法改正の中身/「55%→20%」が適用されるまでのタイムライン/20%の対象外となる取引(海外取引所・DEX・ステーキング)/国内現物ETF解禁のインパクト試算 |
「2028年から暗号資産は全部20%」ではない。
20%になるのは「国内業者を通じた特定暗号資産の取引」だけ。
海外取引所・DEX・ステーキング報酬は、
これからも最大55%の総合課税である。
皆さん、こんにちは。
2026年7月15日、日本の暗号資産の歴史が変わりました。
参議院本会議で金融商品取引法(金商法)の改正案が可決・成立。暗号資産の規制が資金決済法から金商法へ移管され、ビットコイン、イーサリアム、XRPなど約105銘柄が、株式や債券と同じ「金融商品」として正式に位置づけられたのです。
2017年、マウントゴックス事件の反省から資金決済法での規制が始まって約9年。「怪しい決済手段」という扱いだった暗号資産が、ついに国のお墨付きの投資対象になりました。これは間違いなく歴史的な転換点です。
ただし、今日お伝えしたいのは祝賀ムードの話だけではありません。「最大55%が20%になる」という見出しの裏で、”20%になれない取引”がはっきりと線引きされているという事実です。ここを知らずに動くと、2028年以降もあなたの取引は55%課税のままです。
目次
7月15日、何が決まったのか
まず今回成立した金商法改正のポイントを整理します。
| 法的位置づけ | 決済手段(資金決済法)→ 金融商品(金商法)へ移管 |
| 対象銘柄 | ビットコイン、イーサリアム、XRPなど約105銘柄 |
| 新たな規制 | インサイダー取引の禁止/発行者の年次開示義務/投資家保護ルールの整備 |
| 罰則強化 | 無登録業者への懲役上限 3年→10年/罰金 300万円→1,000万円 |
| 施行時期 | 2027年度の全面施行を目標 |
つまり日本は、暗号資産を「認める」と同時に「縛る」方向へ大きく舵を切りました。合法の枠内にいる投資家は手厚く保護し、枠の外にいる無登録業者には懲役10年。アメとムチが非常にはっきりした改正です。
税率55%→20%へ。ただし適用は2028年から
投資家にとって最大の関心事は、やはり税金でしょう。
現在、暗号資産の利益は「雑所得(総合課税)」に区分され、住民税を含めると最大55%。これが株式並みの一律20%(復興特別所得税込みで20.315%)の申告分離課税に変わります。3年間の損失繰越控除も新設されます。
ここで重要なのがタイムラインです。「法律が通った=今年から20%」ではありません。
| 2026年3月31日 | 改正所得税法が成立(20%分離課税の根拠法) |
| 2026年7月15日 | 金商法改正が成立(今回)──分離課税の”前提条件”がクリア |
| 2027年度 | 金商法改正の全面施行(政令・内閣府令の整備) |
| 2028年1月(有力) | 20%分離課税の適用開始(施行日の翌年1月1日以降の譲渡から) |
なお、適用開始前に取得した暗号資産でも、適用開始後に売却すれば分離課税の対象になる見込みです。「昔買ったビットコインだから対象外」ということはありません。含み益を抱えたまま2028年を待つという選択肢が、現実味を帯びてきます。
「全員が20%」ではない──線引きの内側と外側
さて、ここからが本コラムの核心です。
20%分離課税の対象は、「特定暗号資産」を「国内の暗号資産取引業者を通じて」譲渡した場合に限定されます。線の内側と外側を整理すると、こうなります。
| 20%分離課税の対象 | 国内取引所での特定暗号資産の現物取引/デリバティブ取引/(解禁後の)ETF |
| 対象外(最大55%のまま) | 海外取引所での取引/DEX(分散型取引所)/個人間の直接取引/マイニング・ステーキング報酬の取得時収入 |
| 損益通算の範囲 | 特定暗号資産の取引内に限定──株式や投資信託との損益通算は不可の見込み |
⚠ 留意点
「2028年から暗号資産は全部20%になる」という理解は誤りです。海外取引所やDEXをメインに使っている方、ステーキング収入がある方は、制度改正後も総合課税(最大55%)が続きます。ご自身の取引がどちら側にあるのか、いまのうちに棚卸しをしておく必要があります。
言い換えると、日本政府のメッセージは明確です。「国内の登録業者の中で取引するなら優遇する。外に出るなら知らない」。金融庁の監視が届く場所に投資家を呼び戻すための、税制を使った”囲い込み”でもあるわけです。
現物ETF解禁が呼び込む「2,000兆円の1%」
もう一つの目玉が、国内での暗号資産現物ETF解禁への道筋です。
今回の改正で法的な土台が整い、東京証券取引所への上場は2027〜2028年が視野に入ってきました。野村ホールディングスやSBIホールディングスなど大手金融が、すでにETF商品を準備していると報じられています。
先行するアメリカでは、2024年1月に上場したビットコイン現物ETFの運用資産が2026年7月時点で約780億ドル。ブラックロックのIBIT単体で約475億ドルに達しています。
そして日本には、約2,000兆円の家計金融資産が眠っています。仮にそのわずか1%が暗号資産ETFへ流れるだけで、約1,300億ドル(約20兆円)規模の資金流入です。証券口座からワンクリックで買える「投資商品としてのビットコイン」が誕生するインパクトは、決して小さくありません。
足元の相場は「極度の恐怖」。制度と市況のねじれ
皮肉なことに、この歴史的な法改正が成立した週、ビットコインは6万ドル台前半で推移しています。
年初は9万3,000ドル超だった価格が、ETFからの資金流出(6月だけで約45億ドル)や、米・イラン間の緊張による原油高・インフレ再燃を受けて大きく調整。市場心理を示すFear & Greed指数は「極度の恐怖」ゾーンに沈んでいます。
制度は前進、価格は後退──この”ねじれ”の局面をどう見るかは投資家それぞれですが、少なくとも言えるのは、日本の制度整備は価格と無関係に、不可逆的に進んでいるということです。2028年の税制優遇と国内ETFという「受け皿」が、相場に先回りして完成しつつあります。
💡 投資家への視点
①国内取引所メインの方:2028年の分離課税適用まで、売却タイミングの設計が節税の鍵になります。含み益の実現を急ぐ理由は薄れました。
②海外取引所・DEX利用者の方:あなたの取引は20%の恩恵の外側です。取引の棚卸しと、海外法人・海外口座を含めた全体設計の見直しを。
③これから始める方:国内ETF解禁と税制優遇という「入口」が整うのは2027〜2028年。慌てて高値を追う必要はありませんが、口座やスキームの準備は今からできます。
暗号資産の税制は、国によってまったく違います。ジョージアのように個人のキャピタルゲインが非課税の国もあれば、UAEのように個人所得税自体がない国もあります。「どこで・どの器で持つか」の設計次第で、手取りは大きく変わるのです。日本の制度改正を追い風にしつつ、国際的な視点での資産設計をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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【関連動画】なぜ富裕層は相続税を払わなくてもいいのか?──税金の「器」の考え方はこちらの動画でも解説しています。
■ 出典・参考
・CoinDesk「Japan moves crypto under financial rules in regulatory overhaul」(2026年7月15日)
・大和総研「暗号資産取引に20%の申告分離課税導入へ」(2026年2月6日)
・日本経済新聞「仮想通貨所得、20%分離課税に 28年から株式・投資信託並みに下げ」
・令和8年度税制改正大綱/改正所得税法(2026年3月31日成立)
・Tech Times「Japan Passes Crypto Law: ETFs Could Arrive Before Tax Rate Drops to 20 Percent」(2026年7月16日)
※税制の適用時期・対象範囲は今後の政令等により変更される可能性があります。実際の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。
