Vol.1866:ジョージア法人は「配らなければ、課税なし」──ただし給与と国外送金には”第二の税”が待っている

〇この記事を読むのに必要な時間は約9分です。

埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

読了時間 約7分
対象読者 ジョージア法人の設立を検討している投資家・経営者
この記事で分かること 法人税15%が「かかる支出」と「かからない支出」の境界線/給与・家賃・国外送金に付随する"第二の税"の全体像

「業務に使ったお金に、法人税はかからない」──これはジョージアでは正しい。
しかし「法人税がかからない」=「一切課税がない」ではない。
資金繰りを狂わせるのは、いつも"二層目"の税である。

ジョージア法人の最大の魅力として語られるのが、いわゆる「エストニア型法人税」です。

利益が出ても、社内に留保している限り法人税はゼロ。課税されるのは、利益を「配当」として社外に分配した瞬間だけ──この仕組みは、事業を再投資で伸ばしたい経営者にとって、他国にはない強力なアドバンテージです。

ただし、実際にトビリシで法人を運営し始めると、多くの日本人経営者が同じ場所でつまずきます。

それが、「法人税がかからない支出にも、別の税金がぶら下がっている」という点です。

本日は、弊社がジョージアで会計事務所として実際にサポートしている事例をベースに、「二層構造」で捉えるジョージア法人の税金の仕組みを、図を交えて整理します。

第一層:法人税15%は「分配」した時だけ発生する

まず大原則から。ジョージアの法人税(分配利益課税)は15%ですが、課税のトリガーは「利益が出たこと」ではなく「利益を分配したこと」です。

課税対象となるのは、大きく次の2つです。

課税イベント 内容
① 配当 株主への利益分配。分配した時点で法人税15%が発生
② みなし配当 経済活動(事業)と無関係な支出。社長の私的な買い物、事業実態のない関連者への支払いなど。「実質的な配当」と見なされ15%課税

そして、この裏返しが本日の主題です。

オフィス家賃、従業員給与、仕入、外注費──業務に関連する正当な支出は、法人税15%の課税イベントを構成しません。家賃を払っても給与を払っても、その支出額に法人税が乗ることは一切ない。ここは安心していただいて大丈夫です。

【図1】ジョージア法人の税金は「二層構造」で捉える

▌第一層:分配課税(法人税15%)

発生するのは「配当」と「みなし配当(事業と無関係な支出)」のみ。
家賃・給与・仕入などの正当な事業経費では発生しない

▼ しかし、その下にもう一層

▌第二層:支払いの種類ごとに付随する税

・給与 → 個人所得税20%(源泉徴収)+年金拠出2%/2%
・家賃 → 支払先によりVAT18%や源泉の論点
・国外への支払い → 源泉税5〜15%

第二層①:給与──法人税ゼロでも「源泉20%+年金」は発生する

一番分かりやすい例が給与です。

給与の支払いそのものに法人税15%はかかりません。しかし、ジョージアの個人所得税は一律20%のフラット税率で、これを会社が源泉徴収して納付します。

加えて、雇用による所得(給与所得)には年金拠出が必要です。負担割合は雇用主が給与額の2%、従業員本人が2%です。

【図2】額面給与 1,000 GEL を支払うと、お金はこう流れる

会社の総コスト

1,020 GEL

額面1,000+会社年金2%

国に納付

240 GEL

源泉所得税200+年金 会社20・本人20

従業員の手取り

780 GEL

1,000−源泉200−本人年金20

法人税は0 GEL。しかし国への納付は240 GEL発生している──これが"二層目"の正体です。

⚠ 注意:年金の強制加入はジョージア国民・居住者が中心で、外国人従業員は扱いが分かれます。採用する人材の属性(国籍・居住ステータス)によって確認が必要です。

第二層②:家賃──「誰に払うか」で税の顔が変わる

オフィス家賃も、支払い自体に法人税はかかりません。ただし支払先が誰かで、付随する税が変わります。

支払先 付随する税の論点
VAT登録法人(不動産会社など) 賃料にVAT標準税率18%が上乗せ。自社がVAT登録済みなら仕入VATとして控除・還付可能
個人オーナー 賃料の種類(居住用/商業用)に応じた課税・源泉の論点が別途発生。契約前に相手方のステータス確認が必須

第二層③:国外への支払い──源泉税5%・10%・15%の三段構え

見落とされやすいのが、非居住者(海外のサプライヤーやコンサルタント等)への支払いです。ここには分配課税とは別枠で源泉税がかかります。

支払いの種類 源泉税率
ロイヤルティ(非居住者宛・標準) 5%
技術サービス・コンサルティング等のサービスフィー(非居住者宛) 10%
受取人がタックスヘイブン居住者の場合 15%に引き上げ

実例:トビリシでIT法人を運営するAさんの1ヶ月

ここまでを、弊社の実際のサポート事例をモデルにした「Aさんの法人」で確認しましょう。日本人投資家Aさんは、トビリシにIT・コンサル事業の法人を設立し、次のような支出をしています。

支出 法人税15% 付随する税(二層目)
オフィス家賃(VAT登録法人へ) かからない VAT18%(登録済みなら控除可)
現地従業員の給与 かからない 源泉所得税20%+年金2%/2%
海外コンサルへのフィー送金 かからない 源泉税10%(タックスヘイブン宛なら15%)
社長の私的な高級時計の購入 みなし配当→15%課税
株主(Aさん)への配当 15%課税 配当源泉税の論点あり

ご覧の通り、「事業のためのお金」は自由に動かせる一方、「オーナーの財布に向かうお金」と「国外・個人に向かうお金」には税が待っている──これがジョージア法人のリアルな構図です。

💡 投資家インサイト:ジョージア法人の節税メリットを最大化する鍵は、「配当をいつ・いくら出すか」のコントロールと、「二層目の税を織り込んだ資金繰り表」の設計です。特に従業員を雇う前提であれば、額面+源泉+年金会社負担分を合算した「給与総コスト」のシミュレーション表を作ってから採用予算を組むことを強くおすすめします。

まとめ:ジョージア法人の税金は「三行」で覚える

① 分配課税(法人税15%)──配当・みなし配当(事業と無関係な支出)にのみ発生。家賃・給与などの正当な事業経費では発生しない。

② 源泉・給与関連税──給与は所得税20%+年金2%/2%。個人や非居住者への支払いには源泉税(5%/10%/15%)。

③ VAT18%──課税仕入に付随。VAT登録法人なら控除・還付が可能。

「業務支出に法人税はかからない」は正しい。しかし、給与や国外への支払いには別レイヤーの税がぶら下がっている──この二層構造で押さえておくのが、実務上もっとも安全です。

弊社はジョージアで会計事務所として、法人設立から記帳・税務申告・給与計算まで一気通貫でサポートしています。設立前の「税コスト・シミュレーション」のご相談も、下記よりお気軽にどうぞ。

最新コラムの通知を受け取る

MLP公式LINEにお友達登録をしていただくと、
毎日の投資コラムの更新通知と、海外投資の最新情報をいち早くお届けします。

MLP公式LINE お友達登録はこちら

▶ MLP公式YouTubeチャンネル

ジョージア・エジプト・ドバイの現地リアル情報を動画で配信中。
コラムと合わせてご覧いただくと、理解が一段深まります。

チャンネルを見る

【参考】ジョージア歳入庁(Revenue Service of Georgia/rs.ge)、ジョージア税法(Tax Code of Georgia)、弊社ジョージア会計事務所の実務事例
※税率・制度は執筆時点の情報です。個別の税務判断は、必ず最新の法令と専門家への確認のうえ行ってください。

METI LUX PARTNERS

ジョージア・ナイジェリア・エジプト・ドバイなど新興国を中心に、
海外法人設立・銀行口座開設・国際税務・海外不動産投資をサポートしています。

累計不動産取引数608

海外不動産投資、移住・進出サポート
どんなお悩みでもご相談ください

累計不動産取引数608

海外不動産投資、移住・進出サポート
どんなお悩みでもご相談ください

SNS