
INVESTOR COLUMN ── Vol.1864
目次
ジョージアに「公募できるファンドの器」を持つ ── UCITS認可と登録、日本語で作る投資ビークル
〔特集コラム〕コーカサスの小国が用意した、EU水準のファンド規制と資本金30万ラリという入口
| Category | 地域別経済情報/ジョージア |
| Region | ジョージア |
| Keyword | 投資ファンド・UCITS・国立銀行(NBG)・資産運用会社・公募 |
| 執筆/読了 | 埜嵜 雅治(Meti Lux Partners 代表)/約9分・2026.07.01 |
弊社(Meti Lux Partners)はトビリシに拠点を置き、ジョージアでの会計・税務手続きを日本語でサポートしてまいりました。ここ半年ほど、日本の投資家や資産運用会社から寄せられる相談の質が変わってきています。「口座を作りたい」ではなく、「ジョージアで公募できるファンドを作れないか」という相談です。実はジョージアには、EUのUCITS基準を参考にした「認可(Authorised)ファンド」制度と、少人数私募向けの「登録(Registered)ファンド」制度が既に整備されており、新興国としては驚くほど骨格の整った枠組みが存在します。今日は、この2つの制度の違いと設立の実務を、現場目線で整理します。
なぜ、いまジョージアの投資ファンドなのか
ジョージアの金融当局である国立銀行(NBG)は、2020年施行の「投資ファンド法」に基づき、EUの制度設計を参考にした規制の骨格を導入しました。コーカサスの小国ではありますが、資本移動の自由度が高く、配当・キャピタルゲイン課税の設計も投資対象ごとに明確化されています。加えて、ロシア・中央アジア・中東を結ぶ地理的な位置づけから、新興国マネーの「受け皿」としてファンドビークルを置く動きが、地域の運用会社の間で静かに広がっています。
「認可(Authorised)」と「登録(Registered)」──何が違うのか
ジョージアの投資ファンドは、大きく2種類に分かれます。
- 認可ファンド(Authorised Investment Fund):国立銀行の認可を受け、UCITS型または一般リテール型として組成。公募が可能で、リテール投資家数の上限はありません。
- 登録ファンド(Registered Investment Fund):国立銀行への登録のみで足りますが、私募限定・リテール投資家は最大20人までという制約があります。
| 項目 | 認可ファンド | 登録ファンド |
| 公募・私募 | 公募可(人数上限なし) | 私募のみ(最大20人) |
| 最低資本金 | 30万ラリ(約1,700万円前後) | 規制なし |
| 保管機関(Depositary) | 義務 | 不要 |
| 運用会社 | ライセンス保有必須 | 登録のみで可 |
| 主な開示書類 | 目論見書・KIID・年次/半期報告書 | 投資家・戦略・資産に関する情報開示 |
出典:ジョージア国立銀行(NBG)公表資料をもとに弊社作成(1ラリ≒57円換算、2026年6月時点)
「私募20人まで」の登録ファンドは、資本金ゼロ・保管銀行不要で組成できる。
これは、機動性を優先する新興ファンドにとって、最初の器として現実的な選択肢になる。
設立に必要な書類と流れ
ビークルの法的形式は、投資会社(株式会社=JSC)または契約型の共同ファンド(Common Fund)から選択します。登録ファンドが投資会社形態を取る場合は、JSCに加えてLLC・GP・LPでの組成も認められています。設立に必要な主な書類は次のとおりです。
- 認可ファンド:定款、目論見書、KIID(重要投資家情報書類)、保管機関との契約書、資本金(30万ラリ)に関する情報、役員・主要株主の情報、認可手数料の納付証明
- 登録ファンド:定款、役員・主要株主の情報、登録手数料の納付証明
国立銀行は、申請受理から原則1ヶ月以内に認可・登録の可否を判断する運用です。実務の流れとしては、①ビークル選定 → ②運用会社の確保(自社でライセンス取得、または既存のライセンス保有運用会社への委託)→ ③保管銀行との契約(認可ファンドのみ)→ ④目論見書・定款等の作成 → ⑤国立銀行への申請 → ⑥認可・登録、という順序になります。
税制はどう設計されているか
ジョージアのファンド課税は、投資対象によって税率が細かく分かれているのが特徴です。預金・国債・国際金融機関債・上場株式などへの投資から生じる分配益は5%、それ以外の金融商品や不動産等からの分配益は15〜20%が原則です。さらに、ユニットが公募を通じて発行され、ジョージア国立銀行が認めた規制市場で売買される場合、キャピタルゲインは個人・法人ともに非課税となる設計です。契約型の共同ファンド(Common Fund)は税務上パススルー(全額投資家に帰属)として扱われ、投資会社(JSC等)は部分的な帰属という違いもあります。
⚠ 留意点
本稿は制度の全体像を紹介するものであり、個別の税務・法務判断を代替するものではありません。資本金要件・課税区分・運用会社の要件は今後の法改正で変わり得るため、組成前に最新の法令確認と専門家への相談が必須です。
投資家・運用会社がいま準備できること
公募を狙うなら認可ファンド一択ですが、30万ラリの資本金と保管銀行契約というハードルがあります。一方、まずは20人以内の私募でトラックレコードを作り、後から認可ファンドへ移行するという段階的な設計も、ジョージアの制度上は現実的です。弊社は、トビリシ拠点の日本語対応チームとして、定款・目論見書の作成支援、国立銀行への申請書類の整理、運用会社(AMC)のライセンス取得サポート、設立後の継続的な会計・報告対応まで、一貫してご支援しています。
💡 投資家への視点 ── このコラムから持ち帰る3つのこと
① 認可ファンドは資本金30万ラリでEU水準の公募ファンドを持てる。人数上限もない。
② 登録ファンドは資本金ゼロ・保管銀行不要。まずは私募20人以内で機動的に始める選択肢がある。
③ 課税は投資対象次第で0〜20%まで変動。組成前の税務設計が、その後の手取りを大きく左右する。
結び ── 「箱」を先に持つか、後から広げるか
ジョージアのファンド制度は、公募を見据えた「認可ファンド」と、機動性を優先する「登録ファンド」という、目的の異なる2つの器を用意しています。どちらを選ぶかは、集めたい投資家の数、初期資本の規模、そして将来どこまで規模を拡大したいかという設計次第です。新興国のファンド制度としては珍しく、書類要件も課税区分も明文化されているからこそ、日本語での正確な読み解きが最初の一歩になると、弊社は考えています。
関連サービス・リンク
主な参照情報源:ジョージア国立銀行(National Bank of Georgia)公式ページ「Investment Funds」および「Investment Funds Roadmap」、ジョージア「投資ファンド法(Law of Georgia on Investment Funds)」、NBG規則(Decree №167/04, 168/04, 170/04, 2020年9月22日付)ほか(2026年6月時点の公表情報に基づく)。本稿は特定のファンド組成や投資商品の取得を推奨・勧誘するものではなく、法令・税制は変更される可能性があります。資本金額・為替換算は執筆時点の概算です。最終判断は最新の法令確認と専門家への相談のうえ、ご自身の責任でお願いいたします。
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