Vol.1869:人口は10年で53%増。黒海リゾート「バトゥミ」を観光・移民・不動産データで徹底解剖します。

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埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

Vol.1869|ジョージア・不動産

人口は10年で53%増。黒海リゾート「バトゥミ」を観光・移民・不動産データで徹底解剖します。

エメラルドの峡谷と地下洞窟、そして17,478戸が売れた不動産市場──”コーカサスのドバイ”の実力とは

公開日 2026年7月9日
カテゴリ ジョージア/海外不動産/地域別経済情報
読了時間 約8分

みなさん、こんにちは。
エジプト社長のMasaです。

今日は久しぶりにジョージア第2の都市「バトゥミ」を取り上げます。

バトゥミと聞くと「カジノの街」「黒海のリゾート」というイメージが先行しますが、実はこの街、直近10年の国勢調査で人口が53%も増えた、旧ソ連圏でも極めて珍しい”人口爆発都市”です。

前半では、私が皆さんにぜひ知ってほしいバトゥミ観光の魅力を。後半では、投資家として絶対に押さえるべき人口・移民・不動産価格・賃料のデータを、順番に解説していきます。

観光客が集まる街には、人が住みつく。
人が住みつく街には、賃料が生まれる。
バトゥミは今、その方程式のど真ん中にいます。

バトゥミは「観光の拠点」として一級品

まず観光の話から。バトゥミ自体のビーチや旧市街ももちろん魅力的ですが、本当の強みは「西ジョージアの大自然への玄関口」である点です。車で1〜3時間圏内に、世界レベルの自然スポットが集中しています。

①マルトヴィリ峡谷(Martvili Canyon)

マルトヴィリ峡谷:エメラルドグリーンの水と石灰岩の岩壁
マルトヴィリ峡谷。エメラルドの水をボートで進む(出典:Wikimedia Commons

バトゥミから車で約2時間半。エメラルドグリーンの水が流れる峡谷を、小さなゴムボートで進むアクティビティが名物です。かつてこの一帯を支配したダディアニ公爵家の「水浴び場」だったという歴史があり、石灰岩の白い岩壁と原生林、透明度の高い水のコントラストは、東南アジアのリゾートとはまったく違う”コーカサスの秘境感”があります。遊歩道も整備されており、体力に自信がない方でも楽しめます。

②プロメテウス洞窟(Prometheus Cave)

プロメテウス洞窟:ライトアップされた鍾乳石
プロメテウス洞窟。ライトアップされた鍾乳石の大ホール(出典:Wikimedia Commons

クタイシ近郊にある、ジョージア最大級の鍾乳洞です。全長約11kmのうち約1.4kmが公開されており、ライトアップされた鍾乳石の大ホールを歩いた後、地下河川をボートで下って出口へ抜けるルートが圧巻。1984年に発見され、観光整備されたのは2011年と比較的新しく、施設もきれいです。「火を人類に与えたプロメテウスがコーカサスの山に鎖でつながれた」というギリシャ神話にちなんだ命名で、ネーミングセンスも含めて観光国家ジョージアの本気を感じます。

③温泉(マヒンジャウリ/ツカルトゥボ)

ツカルトゥボ第7浴場:ラドン温泉のプール
ツカルトゥボの浴場に湧くラドン温泉。源泉温度33〜35℃で加温不要の”かけ流し”(出典:Wikimedia Commons

意外と知られていませんが、ジョージアは温泉大国です。バトゥミのすぐ北隣にはマヒンジャウリの硫黄泉があり、プロメテウス洞窟の近くには、ソ連時代に療養都市として栄えたツカルトゥボのラドン温泉があります。スターリンも通ったという歴史ある湯治場で、現在は廃墟となった壮麗なサナトリウム群が”ソ連遺産”として逆に観光資源になっています。温泉好きの日本人には間違いなく刺さるエリアです。

④コルヘティ国立公園(Kolkheti National Park)

コルヘティ国立公園:パリアストミ湖のボートツアー
コルヘティ国立公園のボートツアー。2021年に世界自然遺産登録(出典:Wikimedia Commons

バトゥミから北へ約1時間。黒海沿岸に広がる広大な湿地帯と原生林の国立公園で、2021年に「コルキスの雨林と湿地」としてユネスコ世界自然遺産に登録されました。パリアストミ湖のボートツアーやカヤック、渡り鳥のバードウォッチングが楽しめます。ギリシャ神話でイアソンが「金羊毛」を求めて旅した伝説の地・コルキスがまさにここです。

つまりバトゥミは、海・峡谷・洞窟・温泉・世界遺産の湿地がすべて日帰り圏内に揃う、観光拠点として非常に完成度の高い街なのです。実際、ジョージア国内のブランドホテル稼働率ではバトゥミが約60%と全国トップを走っており、2023年にはアジャラ自治共和国だけで254万人の観光客が訪れています。

人口の推移:10年で+53%という異常値

ここからが投資家向けの本題です。まず人口。国勢調査ベースの推移を見てください。

国勢調査 バトゥミ市人口 増減
2002年 155,176人
2014年 152,839人 ▲1.5%
2024年(速報値) 234,600人 +53.5%

ジョージアという国全体の人口は、ソ連崩壊後の1989年の492万人から2014年には371万人まで減り続けた「人口減少国」でした。それが2024年調査では391万人へと初めて増加に転じ、その増加を牽引したのがトビリシ(110万→130万人)と、バトゥミを擁するアジャラ自治共和国(33.3万→40.1万人)です。

国が縮む中で、10年で5割増える都市。日本で例えるなら、全国の人口が減る中で福岡市だけが80万人から120万人に増えたようなインパクトです。

移民流入の推移:戦争が変えた人口動態

この人口増の正体は、出生ではなく移民です。

指標 数値
ジョージアへの移民流入(2020年) 約9.0万人
同・外国籍の移民流入(2022年:ウクライナ侵攻の年) 12.5万人超
同・移民流入(2023年) 約20.6万人
国内の外国人永住者:2014年→2024年 2.2万人(0.6%)→約25万人(6.6%)
バトゥミ在住ロシア人(推計) 約3万人(市人口の15〜17%)

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻、そして同年9月の部分動員令。この2つを境に、ロシア・ベラルーシ・ウクライナから大量の人がジョージアに流れ込みました。累計120万人のロシア人が入国し、ピーク時には約11万人が国内に定住したとされ、その受け皿になったのがトビリシとバトゥミです。

ジョージアは過去20年間ほぼ一貫して「人が出ていく国」でしたが、2022年には純流入+54,509人という史上初の大幅プラスを記録。その後、一部のロシア人は第三国へ再移動しましたが、外国人永住者の絶対数は10年前の10倍以上の水準で定着しています。近年はイスラエル・EU・中央アジアからの流入がロシア人の減少分を埋めており、移民の「多国籍化」が進んでいるのが最新のトレンドです。

不動産価格の推移:6年で約1.7倍

では、この人口流入は不動産価格にどう反映されたのか。バトゥミの平均取引価格の推移です。

平均価格(USD/㎡) 前年比
2019年 $838
2021年 $844 横ばい
2022年(侵攻・移民流入) $897 +6.3%
2024年(新築市場・12月) $1,470 +11.4%
2025年(市場平均) $1,395〜1,865 +9.4〜17%

2025年の年間販売戸数は17,478戸(前年比+15%)、取引総額は約13億ドル。2026年第1四半期も4,049戸(+15.8%)と勢いが続いています。エリア別では、旧市街(Old Batumi)が約$3,028/㎡と最高値、新興のニューブルバード地区が$1,300〜1,600/㎡、周辺部なら$1,500前後から買える、という価格構造です。

それでも、1LDKの中心部価格で比較すると、アンタルヤ($2,554)、ヴァルナ($3,230)、スプリト($6,992)といった周辺の黒海・地中海リゾートより依然として大幅に安いのがバトゥミの現在地です。

賃料の推移:利回りは今も世界のリゾート上位

賃料はもっとドラマチックでした。2022年の移民流入直後には、月$200〜250だったワンルームの家賃が$600〜700へと約3倍に高騰。その後は正常化しましたが、水準自体は切り上がったまま定着しています。

時期 平均賃料(USD/㎡/月) 平均利回り
2025年6月 $11.9 8.6%
2026年Q1 $9.6〜11.0 7.1%

利回り7〜8%台というのは、ブドヴァ(5.5%)、リスボン(5.9%)、ニース(4.6%)、アンタルヤ(4.6%)など世界の主要リゾート都市と比べて明確に高い水準です。50㎡のアパートなら月500〜600ドルの賃料収入が現実的なレンジになります。

⚠ ここは要注意:供給過剰リスク

良い話ばかりではありません。2025年末時点の未販売在庫は約12,400戸(前年比+13.9%)。市の住宅ストックは2020年の8.6万戸から2024年に11.9万戸へ増え、さらに2025〜2029年に約5.8万戸の新規供給が計画されており、その8割が短期賃貸(民泊型)向けです。Galt & Taggartは2026年の新築価格上昇率を+4〜6%へ減速すると予想。利回りも供給増とともにじわじわ低下しています。「どのエリアの、どの物件を、どの価格で買うか」の選別が、これまで以上に重要になるフェーズです。

💡 投資家への示唆

バトゥミの本質は「カジノの街」ではなく、観光インフラ+移民流入+外国人が土地建物を自由に保有できる制度の三拍子が揃った、旧ソ連圏で唯一級の成長都市だということです。所得税1%の個人事業主制度、キャピタルゲイン非課税(2年保有)、CRSの適用が始まったばかりの銀行制度など、ジョージア全体の投資環境と組み合わせて考えるべき市場です。一方で供給過剰局面に入りつつある今、「新築プレビルドを言い値で買う」のではなく、立地と実需(長期賃貸需要)で選ぶ目線が必須です。

まとめ

本日のポイントを整理します。

・バトゥミは峡谷・洞窟・温泉・世界遺産湿地が日帰り圏内に揃う観光拠点
・人口は10年で+53.5%(15.3万人→23.5万人)と旧ソ連圏屈指の急成長
・2022年以降の移民流入で外国人永住者は全国で10倍以上に増加
・不動産価格は6年で約1.7倍、それでも周辺リゾート比では割安
・利回り7〜8%は世界リゾート上位。ただし供給過剰リスクの管理が必須

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参考情報・出典

ジョージア国家統計局(Geostat)2024年国勢調査速報値/Galt & Taggart「Batumi Residential Real Estate」各四半期レポート/TBC Capital市場分析/ジョージア国家観光局(GNTA)統計/ISET Policy Institute「Migration Trends in Georgia」(2025)/OC Media・各種現地報道

Masa Nozaki(エジプト社長Masa)
Meti Lux Partners 代表
ドバイ・カイロ・トビリシ・ラゴスを拠点に、新興国投資・国際税務・海外口座開設をサポート
X:@masanozaki2/Instagram:@masanozaki411

累計不動産取引数608

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