
| 読了時間 | 約7分 |
| 対象読者 | ジョージア法人の設立を検討している投資家・経営者 |
| この記事で分かること | 法人税15%が「かかる支出」と「かからない支出」の境界線/給与・家賃・国外送金に付随する"第二の税"の全体像 |
「業務に使ったお金に、法人税はかからない」──これはジョージアでは正しい。
しかし「法人税がかからない」=「一切課税がない」ではない。
資金繰りを狂わせるのは、いつも"二層目"の税である。
ジョージア法人の最大の魅力として語られるのが、いわゆる「エストニア型法人税」です。
利益が出ても、社内に留保している限り法人税はゼロ。課税されるのは、利益を「配当」として社外に分配した瞬間だけ──この仕組みは、事業を再投資で伸ばしたい経営者にとって、他国にはない強力なアドバンテージです。
ただし、実際にトビリシで法人を運営し始めると、多くの日本人経営者が同じ場所でつまずきます。
それが、「法人税がかからない支出にも、別の税金がぶら下がっている」という点です。
本日は、弊社がジョージアで会計事務所として実際にサポートしている事例をベースに、「二層構造」で捉えるジョージア法人の税金の仕組みを、図を交えて整理します。
目次
第一層:法人税15%は「分配」した時だけ発生する
まず大原則から。ジョージアの法人税(分配利益課税)は15%ですが、課税のトリガーは「利益が出たこと」ではなく「利益を分配したこと」です。
課税対象となるのは、大きく次の2つです。
| 課税イベント | 内容 |
|---|---|
| ① 配当 | 株主への利益分配。分配した時点で法人税15%が発生 |
| ② みなし配当 | 経済活動(事業)と無関係な支出。社長の私的な買い物、事業実態のない関連者への支払いなど。「実質的な配当」と見なされ15%課税 |
そして、この裏返しが本日の主題です。
オフィス家賃、従業員給与、仕入、外注費──業務に関連する正当な支出は、法人税15%の課税イベントを構成しません。家賃を払っても給与を払っても、その支出額に法人税が乗ることは一切ない。ここは安心していただいて大丈夫です。
【図1】ジョージア法人の税金は「二層構造」で捉える
▌第一層:分配課税(法人税15%)
発生するのは「配当」と「みなし配当(事業と無関係な支出)」のみ。
家賃・給与・仕入などの正当な事業経費では発生しない。
▼ しかし、その下にもう一層
▌第二層:支払いの種類ごとに付随する税
・給与 → 個人所得税20%(源泉徴収)+年金拠出2%/2%
・家賃 → 支払先によりVAT18%や源泉の論点
・国外への支払い → 源泉税5〜15%
第二層①:給与──法人税ゼロでも「源泉20%+年金」は発生する
一番分かりやすい例が給与です。
給与の支払いそのものに法人税15%はかかりません。しかし、ジョージアの個人所得税は一律20%のフラット税率で、これを会社が源泉徴収して納付します。
加えて、雇用による所得(給与所得)には年金拠出が必要です。負担割合は雇用主が給与額の2%、従業員本人が2%です。
【図2】額面給与 1,000 GEL を支払うと、お金はこう流れる
会社の総コスト
1,020 GEL
額面1,000+会社年金2%
国に納付
240 GEL
源泉所得税200+年金 会社20・本人20
従業員の手取り
780 GEL
1,000−源泉200−本人年金20
法人税は0 GEL。しかし国への納付は240 GEL発生している──これが"二層目"の正体です。
⚠ 注意:年金の強制加入はジョージア国民・居住者が中心で、外国人従業員は扱いが分かれます。採用する人材の属性(国籍・居住ステータス)によって確認が必要です。
第二層②:家賃──「誰に払うか」で税の顔が変わる
オフィス家賃も、支払い自体に法人税はかかりません。ただし支払先が誰かで、付随する税が変わります。
| 支払先 | 付随する税の論点 |
|---|---|
| VAT登録法人(不動産会社など) | 賃料にVAT標準税率18%が上乗せ。自社がVAT登録済みなら仕入VATとして控除・還付可能 |
| 個人オーナー | 賃料の種類(居住用/商業用)に応じた課税・源泉の論点が別途発生。契約前に相手方のステータス確認が必須 |
第二層③:国外への支払い──源泉税5%・10%・15%の三段構え
見落とされやすいのが、非居住者(海外のサプライヤーやコンサルタント等)への支払いです。ここには分配課税とは別枠で源泉税がかかります。
| 支払いの種類 | 源泉税率 |
|---|---|
| ロイヤルティ(非居住者宛・標準) | 5% |
| 技術サービス・コンサルティング等のサービスフィー(非居住者宛) | 10% |
| 受取人がタックスヘイブン居住者の場合 | 15%に引き上げ |
実例:トビリシでIT法人を運営するAさんの1ヶ月
ここまでを、弊社の実際のサポート事例をモデルにした「Aさんの法人」で確認しましょう。日本人投資家Aさんは、トビリシにIT・コンサル事業の法人を設立し、次のような支出をしています。
| 支出 | 法人税15% | 付随する税(二層目) |
|---|---|---|
| オフィス家賃(VAT登録法人へ) | かからない | VAT18%(登録済みなら控除可) |
| 現地従業員の給与 | かからない | 源泉所得税20%+年金2%/2% |
| 海外コンサルへのフィー送金 | かからない | 源泉税10%(タックスヘイブン宛なら15%) |
| 社長の私的な高級時計の購入 | みなし配当→15%課税 | ─ |
| 株主(Aさん)への配当 | 15%課税 | 配当源泉税の論点あり |
ご覧の通り、「事業のためのお金」は自由に動かせる一方、「オーナーの財布に向かうお金」と「国外・個人に向かうお金」には税が待っている──これがジョージア法人のリアルな構図です。
💡 投資家インサイト:ジョージア法人の節税メリットを最大化する鍵は、「配当をいつ・いくら出すか」のコントロールと、「二層目の税を織り込んだ資金繰り表」の設計です。特に従業員を雇う前提であれば、額面+源泉+年金会社負担分を合算した「給与総コスト」のシミュレーション表を作ってから採用予算を組むことを強くおすすめします。
まとめ:ジョージア法人の税金は「三行」で覚える
① 分配課税(法人税15%)──配当・みなし配当(事業と無関係な支出)にのみ発生。家賃・給与などの正当な事業経費では発生しない。
② 源泉・給与関連税──給与は所得税20%+年金2%/2%。個人や非居住者への支払いには源泉税(5%/10%/15%)。
③ VAT18%──課税仕入に付随。VAT登録法人なら控除・還付が可能。
「業務支出に法人税はかからない」は正しい。しかし、給与や国外への支払いには別レイヤーの税がぶら下がっている──この二層構造で押さえておくのが、実務上もっとも安全です。
弊社はジョージアで会計事務所として、法人設立から記帳・税務申告・給与計算まで一気通貫でサポートしています。設立前の「税コスト・シミュレーション」のご相談も、下記よりお気軽にどうぞ。
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【参考】ジョージア歳入庁(Revenue Service of Georgia/rs.ge)、ジョージア税法(Tax Code of Georgia)、弊社ジョージア会計事務所の実務事例
※税率・制度は執筆時点の情報です。個別の税務判断は、必ず最新の法令と専門家への確認のうえ行ってください。
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