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「ジョージアのオンラインカジノ免許は、手続きは速いが、手数料が世界屈指で重い」──これが、ついこの間までの常識でした。ところが2026年6月、その常識を覆しかねない法案が議会に提起されます。外国人専用の免許に限り、年間手数料が“約50分の1”に下がるかもしれない、というのです。
本コラムでは、これまで「年10%の定期預金」「VASPライセンス」という切り口で取り上げてきた「許認可立国ジョージア」のもう一つの顔──オンラインゲーミング免許について、どんな種類があり、いくらかかり、どうやって取るのかを、できるだけ平易に整理してまいります。
目次
- 1 まず、いま何が起きているか ── ニュースから入るWhere the Story Begins
- 2 前提 ── ジョージアの免許制度を支える「三者」The Three Authorities Behind the System
- 3 免許の種類 ── B2CとB2B、そして「単独で取れるもの」License Types — B2C, B2B, and the One Exception
- 4 2024年12月改正という地殻変動 ── 「オフショア化」の解禁The 2024 Reform — Going Offshore
- 5 取得の現実 ── 要件と「5つのステップ」The Reality of Getting Licensed
- 6 いくらかかるのか ── 費用と税の“二層構造”The Cost — Fees and the Two-Tier Tax
- 7 見落としてはいけない論点 ── 広告規制・AML・そして「日本居住者」The Checkpoints You Cannot Ignore
- 8 結び ── 「免許」ではなく「設計」で持つChoose the Structure First
まず、いま何が起きているか ── ニュースから入るWhere the Story Begins
2026年6月、与党「ジョージアン・ドリーム」の議員から、ある法案が提起されたと報じられました。外国人プレイヤー専用の新しい5年免許を、オンラインカジノ・インターネットスロット・スポーツベッティングの3カテゴリーで創設する、という内容です。ジョージア国民のアクセスは禁止され、専用ドメインを通じた運営が前提とされています。
注目すべきは、その年間手数料です。現行の単独オンラインカジノ免許が年間500万ラリ(約170万ドル)であるのに対し、提案された外国人専用免許は年間10万ラリ(約3.8万ドル)。実に約50分の1の水準です。
数字だけ見れば、これは劇的です。これまでジョージア最大の参入障壁だった「重い手数料」が、外国人特化型に限って崩れる可能性がある──ここが今回の本質です。ただし、これはまだ「提案段階」であり、成立・施行は未定です。だからこそまず、そもそもジョージアの免許制度がどう作られているのかを、順を追って押さえておきましょう。
前提 ── ジョージアの免許制度を支える「三者」The Three Authorities Behind the System
ジョージアの賭博規制の土台にあるのは、2005年制定の「宝くじ・賭博およびその他の賞金付きゲームの組織化に関する法律」(賭博法)です。これに許認可法・手数料法・税法典が重なり、規制の枠組みを形づくっています。運用は、ざっくり三者の分担で理解すると分かりやすい。
- ジョージア歳入庁(RSG)……許可(パーミット)の発行・監督・エンフォースメントを担う、実務の中心。
- 財務省……政策立案、下位法令、手数料・技術基準のガイダンスを担う。
- Random Systems Georgia(RSI)……技術認証と、国家モニタリングシステムへの統合を担う“技術の門番”。
そして見逃せないのが、2022〜2023年に成立し、2024年6月および2024年12月に段階施行された大改正です。これにより、これまで曖昧だったオンライン分野が、実店舗(ランドベース)とは別個の独立した免許・税・手数料体系として明文化されました。冒頭のニュースも、この改正の延長線上にあります。
免許の種類 ── B2CとB2B、そして「単独で取れるもの」License Types — B2C, B2B, and the One Exception
免許は大きく、B2C(運営者向け)とB2B(技術・サービス提供者向け)に分かれます。
| 区分 | 主な対象 | 代表的な免許 |
|---|---|---|
| B2C | プレイヤーに直接サービスを提供する事業者 | オンラインカジノ/オンラインスロット/オンラインスポーツベッティング |
| B2B | ゲーム結果に影響する技術を供給する事業者 | プラットフォーム/RNG(乱数発生器)/ゲーミングサーバー/管理システム |
ここで、参入設計上きわめて重要な一点があります。
2024年12月改正という地殻変動 ── 「オフショア化」の解禁The 2024 Reform — Going Offshore
2024年12月施行の改正は、ジョージアを「国際市場向けの拠点」へと押し上げました。柱は3つです。
- デュアルドメイン制……1つの免許で最大2つのドメインを運営可能に。2ドメインを持つ場合は、一方をジョージア国内向け、もう一方を外国人向けに厳格に分離する必要があります。
- 外貨建ての解禁……賭けをラリ(GEL)に加え、ユーロ・米ドルでも受け付け可能に。
- 税負担の二層化……外国人プレイヤー由来の収益に、国内向けより大幅に低い税率を適用(次章で詳述)。
この組み合わせにより、ジョージアはマルタ・キュラソー・マン島といった既存オフショア管轄の“現実的な代替地”として、国際的に語られるようになりました。冒頭のニュースは、この路線をさらに徹底する一手だと位置づけられます。
取得の現実 ── 要件と「5つのステップ」The Reality of Getting Licensed
「速い・開かれている」とはいえ、要件は明確に存在します。実務の流れは、おおむね次の5段階です。
| ステップ | 主な内容 |
|---|---|
| ① 法人設立 | ジョージア法人を設立・登記。外国人・外国法人も可、設立者の居住要件なし。税滞納・前科なしが前提。 |
| ② 申請・適格性 | プラットフォームの事前テスト、ソフト/決済/オッズ計算の各認証、RNG認証(eCOGRA・GLI等の認定機関)、KYC・SOW(資金源証明)審査。 |
| ③ システム統合 | 最低RTP(還元率)90%を満たし、RSI証明書(国家モニタリングへのデジタルキー)を取得して接続。 |
| ④ 銀行・税務 | 法人口座の開設、設立後1ヶ月以内に税務登録。 |
| ⑤ 免許発行 | 要件充足後に許可付与。有効期間5年。標準審査は約20日、追加料金による迅速化も可能。 |
審査スピードは、世界的に見ても短い部類です。さらに事業者はAML(マネロン・テロ資金供与防止)法上の義務対象となり、継続的なコンプライアンス体制が求められます。
いくらかかるのか ── 費用と税の“二層構造”The Cost — Fees and the Two-Tier Tax
ジョージアの特徴は、「税率は穏当、ただし免許手数料は重い」という設計にあります。年間免許料(オンライン分野)の主な水準は次の通りです。
| 免許種別 | 年間免許料 | 備考 |
|---|---|---|
| オンラインカジノ(単独) | GEL 5,000,000 | 約170万ドル。最も重い。 |
| 実店舗カジノ併設のオンラインカジノ | GEL 100,000 | 併設で約50分の1に圧縮。 |
| オンラインスロット(単独) | GEL 1,000,000 | ― |
| オンラインスポーツベッティング | GEL 100,000 | 実店舗スポーツブック免許が必須。 |
これに加えて、オンラインカジノ・ベッティングには四半期ごとの賭博事業手数料 GEL 250,000〜300,000(年換算で約34万〜40万ドル相当)がかかります。RSG/RSIの技術認証費用も別途約1.1万〜1.3万ドル程度を見込む必要があります。
税の側は、プレイヤーの属性で二層化されているのが核心です。
見落としてはいけない論点 ── 広告規制・AML・そして「日本居住者」The Checkpoints You Cannot Ignore
ここまで魅力を並べてきましたが、私たちは“いい話”だけを書く主義ではありません。冷静に押さえるべき論点が、少なくとも3つあります。
- 広告が原則全面禁止──テレビ・ラジオ・屋外・ウェブを問わず賭博広告は禁止。許されるのはスポーツチームや選手・大会へのスポンサーシップのみ。集客設計が他管轄と根本的に異なる。
- AML/コンプライアンス負担──義務対象事業者として、継続的な体制整備・報告・定期監査が必要。「取れば終わり」ではない。
- 日本居住者の法的位置づけ──日本国内からオンラインカジノで賭けを行う行為は、日本の刑法上の賭博罪に該当する。
結び ── 「免許」ではなく「設計」で持つChoose the Structure First
ジョージアのオンラインカジノ免許は、「外資に開かれ、速く、外国人特化なら低税率」という確かな合理性を備えています。一方で、重い手数料・全面的な広告規制・AML義務、そして何よりターゲット市場の適法性という根本論点を、入口で詰め切れるかどうかが成否を分けます。
定期預金のコラムでも、VASPライセンスのコラムでも、弊社の結論は一貫しています。大事なのは“何を取るか”ではなく、“どう設計して持つか”だ、ということです。免許という「紙」を追うのではなく、法人・銀行・税・コンプライアンスを含めた「器」を先に設計する。それができて初めて、制度変更というニュースを、リスクではなくチャンスとして受け取れます。
「何を取るか」の前に、「どう持つか」。
器から考える、ジョージア・ライセンス
STRUCTURE FIRST, LICENSE SECONDMeti Lux Partnersは、ジョージアでの法人設立・銀行口座開設から、VASP(仮想資産)やゲーミングを含む各種ライセンスの取得まで、「器」の設計を起点に一気通貫でサポートします。「免許は取れたが運用で詰まる」という事故を防ぐ、ストラクチャーの最適化を日本語でご案内いたします。
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主な参照情報源:ジョージア賭博法および歳入庁(RSG)の公表情報、Legal 500 Country Comparative Guides(Gambling Law: Georgia)、Andersen in Georgia、CDC Gaming ほか(2025〜2026年の公表情報に基づく)。手数料・税率・各種要件、および「外国人専用免許」は提案段階であり、制度改正や個別事情により異なる場合がございます。本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事業・投資・税務・法務に関する助言ではありません。
Meti Lux Partners ── Dubai · Cairo · Tbilisi · Lagos
執筆者:埜嵜 雅治/Meti Lux Partners 代表取締役CEO
ジョージア、ナイジェリア、エジプトなど今注目の新興国を中心に活動しています。不動産・金融商品を取り扱い、国際税務のアドバイス、海外法人設立、銀行口座の開設サポート、資産管理に関することをサポートしています。
