Vol.1933:外国人専用カジノ許可という”静かな制度設計”――手数料50分の1・税率5%の裏で、本当に問われるもの

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埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

MLP INVESTOR COLUMN | GEORGIA iGAMING
Vol.1933 / 2026年10月3日

外国人専用カジノ許可という“静かな制度設計”
――手数料50分の1・税率5%の裏で、本当に問われるもの

ジョージアが2026年に本格稼働させた「国際オンラインカジノ許可」。数字だけを見れば破格です。しかし、この制度の本質は“安さ”ではなく、「対象市場をどう設計するか」という一点に集約されます。
読了時間約7分
対象読者海外に事業拠点の設計を検討する経営者・投資家の方(制度理解のための情報提供です)
この記事の要点① ジョージアが外国人専用の国際オンラインカジノ許可を本格稼働させた
② コスト・税率は通常許可を大きく下回るが、「総額」は別の話
③ 最大の論点は対象市場の選定で、日本は刑法・法改正により完全に対象外

「年間手数料は通常の50分の1、税率はわずか5%」――こう聞くと、いかにも魅力的な響きがします。

2026年9月、ジョージア(旧グルジア)は外国人専用の「国際オンラインカジノ許可」を本格稼働させました。7月のソフトローンチを経て制度が整い、新興の事業拠点として国際的な注目を集めています。

ただし、コンサルティングの現場で私たちが最初にお伝えするのは、数字の大きさではありません。「この許可は“ジョージアで事業を行う権利”にすぎず、プレイヤーの居住国での適法性までは一切保証しない」という、制度設計の“前提”です。本稿では、要点を図で整理しながら、この制度の構造と、見落とされがちな論点を分解します。

EXHIBIT 1
国際オンラインカジノ許可の“数字”
GEL 10万
国際許可の年間手数料
約US$3.8万。通常許可はGEL 500万で、その1/50
5%
外国人GGRへの課税
粗収益への課税。通常許可は15〜20%
5年
許可の有効期間
1許可につき1ドメイン
不要
最低資本金・申請手数料
法定の最低資本金はなく、申請自体は無料

出典:Legal.ge(2026年10月更新)、SiGMA(2026年7月)、Andersen Georgia(2025年6月)

なぜ今「ジョージア」なのか

この制度は突然現れたわけではなく、数年がかりの政策転換の帰結です。国内向けには規制を強める一方で、外国人向けには優遇枠を切り出す――いわば“内と外を分ける”二層構造を、ジョージアは段階的に組み立ててきました。

EXHIBIT 2
2022〜2026年の主な制度改正
2022年3月
国民の賭博可能年齢を25歳に引上げ、国内広告をほぼ全面禁止。賭博禁止者リストを創設(150万人超)
2024年12月
外国人プレイヤーのGGR課税を5%に軽減し、払戻しへの源泉税を免除。国内向け・海外向けの2ドメイン運営を可能に
2026年6月
許可条件違反の罰金を引上げ(GEL 7,000→20,000)
2026年6〜7月
外国人専用の国際許可3類型(カジノ・スロット・スポーツベット)を新設。年間手数料GEL 10万、1許可1ドメイン
2026年9月
国際オンラインカジノ許可の枠組みが本格稼働。指定事業者RSGが銀行・コンプライアンス・決済の支援パッケージも提供

出典:iGamingToday(2026年9月30日)、SiGMA(2026年7月)、Georgia Today(2026年6月)、Focus Gaming News(2024年10月)

「国際許可」と「通常許可」は、別物

外国人のみを対象とするなら、陸上カジノを必要としない「国際許可」が合理的な選択肢です。通常許可と並べると、その差は一目瞭然です。

EXHIBIT 3
国際許可 vs 通常許可
国際オンラインカジノ許可
参加できるプレイヤー外国人・無国籍者のみ(国民は禁止)
陸上施設不要(単独で取得可能)
年間手数料GEL 100,000
GGRへの課税5%
ドメイン数1許可につき1ドメイン
通常オンラインカジノ許可
参加できるプレイヤー国民を含む(25歳未満・禁止者は除く)
陸上施設陸上許可を前提にすると手数料が軽減
年間手数料GEL 5,000,000(単独取得)
GGRへの課税15〜20%
ドメイン数1許可につき1ドメイン

出典:Legal.ge(2026年10月更新)、SiGMA(2026年7月)、iGamingToday(2026年9月30日)

取得資格はジョージア登記法人のみ。外国法人のままでは申請できません。取締役は1名以上で外国人可・居住要件なし。ただしAML法上、役員の中から責任者を指名し、コンプライアンス・オフィサーを置く必要があります。税の滞納がないこと、役員・出資者・実質的支配者に経済犯罪等の前科がないことも要件です。

本当の関門は、役所ではなく“技術認証”

多くの方が「許可=役所の審査」とイメージしますが、実務上の関門は歳入庁への申請そのものではありません。RSG(Random Systems Georgia)によるシステム認証です。歳入庁への申請は手数料なし・20日以内に決定されますが、プラットフォームとゲーム供給者の選定が取得期間と費用を左右します。

EXHIBIT 4
取得フロー(概略)
1
法人設立
ジョージアLLCの登記、税務登録、取締役・UBOの適格性確認
2
プラットフォーム選定
供給許可を持つゲーム供給者・B2Bプラットフォームの選定
3
RSG認証
RNG・ゲーム・決済基盤・管理システムの審査と認証書の発行
4
歳入庁へ申請
申請手数料なし。年間手数料を前払いし、20日以内に決定
5
運営開始
電子監視システムへの接続、月次納税

出典:Legal.ge(2026年10月更新)、Andersen Georgia(2025年6月)をもとに作成

RSGのサーバーはジョージア国内に置かれ、乱数生成(RNG)・ゲームプラットフォーム・決済基盤・管理システムなどが審査対象となります。ゲームや重要製品は、ジョージアの供給許可を持つ事業者から調達しなければならず、受入れ前に供給者の許可を確認する義務があります。

安いのは“手数料”であって、“総額”ではない

年間手数料の差は確かに劇的です。しかし、ここで立ち止まる必要があります。実際の立ち上げには、RSG認証費用・現地運営費・プレイヤーへの払戻し準備金などが重なります。「手数料が安い」と「総コストが安い」は、別の話です。

EXHIBIT 5
年間許可手数料の比較(GEL)
通常オンラインカジノ許可(単独取得)
5,000,000
国際オンラインカジノ許可(外国人専用)
100,000(1/50)

出典:SiGMA(2026年7月)、Andersen Georgia(2025年6月)

実務上、用意しておくべき資金の目安
年間許可手数料:GEL 10万(約US$3.8万、前払い)
RSG認証費用:約US$2.5万〜3万(政府ではなくRSGへの支払い)
現地運営コスト:年GEL 15〜30万(法律顧問・現地取締役・コンプライアンス要員)
初年度の必要資金(試算):GEL 32万〜48万(約US$12万〜18万)+プラットフォーム費用・払戻し準備金

加えて税務面では、GGR課税と一般の法人税(配当時15%のエストニア型)・配当源泉税との関係整理が必要です。出資者・運営者の居住国によっては、本国側の国際課税ルールとの整合も論点になり得ます。

最大の意思決定は「どの国を顧客にするか」

ここが本稿の核心です。ジョージアの許可は「ジョージアで事業を行う権利」であり、プレイヤーの居住国での適法性までは保証しません。つまり、対象市場の選定こそが、この事業の成否と法的リスクを決める最重要の意思決定になります。

EXHIBIT 6
対象市場の4区分と対応方針
● 禁止・除外必須 ― 例:ジョージア、日本
ジオブロック・国籍/居住地KYC・決済ブロックで確実に排除する
● 自国ライセンス必須 ― 例:欧州の多くの国、米国の各州 など
原則除外。参入する場合は当該国のライセンスを別途取得する
● 明確な規制がない・グレー ― 国ごとに異なる
国別リーガルオピニオンを取得し、リスク許容度に応じて判断
● 外国ライセンスで受入れ可能 ― 国ごとに異なる
国別リーガルオピニオンで確認のうえ、対象市場とする

出典:大阪府「オンラインカジノは違法です!」(2025年9月)、総務省「違法情報ガイドラインの改定について」(2025年9月)、gamblingmaps.org(2026年6月)。区分は例示であり、個別の確認を要します。

CRITICAL | 日本市場は対象にできない

日本では、海外で合法に運営されるオンラインカジノであっても、日本国内から賭ければ刑法の賭博罪に当たります。さらに2025年6月成立・9月25日施行のギャンブル等依存症対策基本法の改正により、国内の不特定の者に向けたオンラインカジノサイトの開設・運営、サイトの提示、誘導情報の発信が明確に禁止されました。

・日本語サイトの開設、日本居住者の受入れ、日本向けの広告・アフィリエイトは行ってはならない
・日本居住の役員・出資者が日本向け運営に関与すると、賭博場開張等図利罪(刑法186条2項)等の刑事責任を問われるおそれがある
・日本の銀行・決済網を使った入出金も、資金洗浄・取引停止のリスクが高い

⚠ ご留意ください

本稿は海外制度の仕組みを解説する情報提供であり、日本居住者を対象とするオンラインカジノ運営を推奨するものでは一切ありません。弊社も、日本居住者を対象とするオンラインカジノ事業の支援は行っておりません。新制度ゆえに運用の不透明さも残るため、実際の検討にあたっては条文確認と当局への事前相談、そして国別の現地弁護士によるリーガルチェックが前提となります。

💡 投資家としての視点

この制度を「安い拠点」として捉えると、本質を見誤ります。むしろ注目すべきは、ジョージアという国が“国内は守り、外貨は呼び込む”二層構造を制度として設計し始めたという事実です。これは銀行口座・法人設立・税制という、弊社が普段扱うテーマとも地続きの動きです。

仮に合法な対象市場に限って検討する場合でも、見るべきは手数料の安さではなく、①対象市場の適法性、②MCC 7995に対応した決済網の確保、③出資者・運営者の居住国側の課税との整合――この3点の“詰まり”です。制度の表の数字より、裏の運用こそがコストを決めます。

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本稿は2026年10月3日時点の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、法律・税務上の助言を構成するものではありません。個別の申請・取引の前に、資格ある弁護士・税理士にご確認ください。
出典:Legal.ge「Online Gambling」(2026年10月更新)/MGL Solutions「Georgia Gaming License」(2026年)/Legarithm「Georgia gambling license」(2025年)/Legal 500「Georgia: Gambling Law」(2025年)/4H Agency「Gambling in Georgia」(2025年)/iGamingToday(2026年9月30日)/SiGMA(2026年7月)/Georgia Today(2026年6月)/gamblingmaps.org(2026年6月)/Andersen Georgia(2025年6月)/Focus Gaming News(2024年10月)/MONEYVAL 第3次強化フォローアップ報告(2024年12月)/総務省「違法情報ガイドラインの改定について」(2025年9月)/大阪府「オンラインカジノは違法です!」(2025年9月)

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