
MLP INVESTOR COLUMN|グローバルマクロ
今週、世界の金融政策が48時間で二度動きます。9月16日にFRB、17〜18日に日本銀行。しかも直感に反して、いま円は「約7カ月ぶりの高値圏」にあります。円の行方を決めるのは、利上げの有無そのものではなく、日米の金利差という一本の綱です。
目次
今週、金融政策が「48時間」で二度動く
まず日程を押さえておきます。米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月15〜16日に開かれ、決定は日本時間17日早朝に判明します。現在のフェデラルファンド金利の誘導目標は3.50〜3.75%(実効ベースで約3.63%)。市場は25bp(0.25%)の利上げを相応の確率で織り込む一方、据え置きを予想する大手金融機関もあり、見方は割れています。
その翌日、日本銀行は9月17〜18日に政策を決めます。現在の政策金利は1.00%。市場(スワップ市場)は25bp利上げで1.25%となる可能性を高い確率で織り込んでいます。実現すれば、約31年ぶり(1995年以来)の高水準です。背景には、企業物価指数が7月+7.2%・8月+7.6%と3年ぶり高水準で推移し、7月の実質賃金が+2.4%と1997年以来の速さで伸びたことがあります。
主要中央銀行が同じ週に相次いで動くのは珍しく、為替市場にとっては一年でも屈指の「イベント週」になります。
直感と逆──円は「安く」ではなく「高く」動いている
「アメリカが利上げなら、また円安では?」——そう感じる方は多いはずです。ところが足元の円は逆の動きをしています。9月に入って一時153円台と約7カ月ぶりの高値圏まで戻し、月間では対ドルで3%超上昇する場面もありました。
円を押し上げているのは、①日銀の追加利上げ観測、②円キャリートレードの巻き戻し、③本国への資金回帰、そして④7月31日に実施された日米の協調介入です。ベッセント米財務長官が繰り返し日銀に利上げを求めてきた経緯もあり、「日本側が動く」という思惑が円を支えてきました。もっとも、8月の米生産者物価(PPI)が加速した直後には一時154円台まで押し戻される場面もあり、綱引きは一方向ではありません。
為替は「どちらが上がるか」の当てものではない。
日米どちらの中央銀行が、どれだけ動くか。その“差”が方向を決める。
カギは「日米金利差」──4つのシナリオ
通貨の方向を大づかみに読むうえで最もシンプルな物差しが、二国間の短期金利差です。現在は米国が3.50〜3.75%、日本が1.00%で、その差はおよそ2.5%。今週の組み合わせ次第で、この差が動きます。
① Fed利上げ + 日銀利上げ
金利差はほぼ横ばい。円は方向感を欠くレンジ相場になりやすい。
② Fed据え置き + 日銀利上げ
金利差は縮小。理論上は円高方向に振れやすい組み合わせ。
③ Fed利上げ + 日銀据え置き
金利差は拡大。円安方向に圧力がかかりやすい。
④ 両行とも据え置き
差は不変だが、「利上げを織り込んでいた分」の反動が出やすい。
重要なのは、どのシナリオでも「差」が起点になっていることです。利上げしたか否かではなく、市場が織り込んでいた水準からどれだけズレたかで、円は動きます。
円キャリートレードという「静かな時限爆弾」
もう一つ見落とせないのが、低金利の円を借りて高利回り資産に投じる「円キャリートレード」の存在です。円が急騰すると、レバレッジを効かせたポジションは為替差損を抱え、最も流動性の高い持ち高——AI・半導体関連株や米国債など——を売って手仕舞う圧力が生じます。過去の日銀利上げ局面でも、この巻き戻しがグローバル市場を揺らしてきました。今週の「二大決定」が、その引き金になり得るという点は頭の片隅に置いておきたいところです。
富裕層が今すべきこと──「方向を当てる」より「通貨を分散する」
ここで強調したいのは、今週の結果を当てにいく必要はない、ということです。プロでも48時間先の為替を正確に読むのは困難で、当てものは投資戦略になりません。
むしろ本質は、資産の100%を円建てで持つこと自体が、「円が上がる」に賭けた一つのポジションだという点にあります。円高に振れれば含み益、円安に振れれば実質的な目減り——その振れに毎回一喜一憂しないための前提が、通貨の分散です。海外の銀行・証券口座を持ち、外貨建てで資産を保有できる状態にしておくこと。それは相場を当てにいく行為ではなく、どの通貨で資産を持つかを自分で選べるようにしておくという、構造的なヘッジにほかなりません。
⚠ 本稿は「決定前」のプレビューです
確率や市場の織り込みは執筆時点のものです。中東情勢や原油価格の動向次第で、中央銀行の判断は上振れ・下振れし得ます。示したシナリオは相場予測ではなく、論点整理のための枠組みです。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。当社は投資助言・税務の専門家であり、本稿は一般的な情報提供を目的としています。
💡 投資家の視点
為替の勝負どころは、結局「金利差」に集約されます。だからこそ、どの通貨で資産を持つかを自分で選べる状態——すなわち海外口座を確保しておくことが、こうしたイベント週のボラティリティに振り回されないための土台になります。相場を当てにいくのではなく、選択肢を持っておく。それが分散の意味です。
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出典
・Federal Reserve(FOMC 開催日程・政策金利)
・Bank of Japan(金融政策決定会合 日程・政策金利)
・Bloomberg/Reuters(日銀利上げ観測、日米協調介入、要人発言)
・Trading Economics(米・日 政策金利、企業物価、為替)
・CME Group/各種市場データ(利上げ織り込み)
※本稿の数値・確率はいずれも執筆時点の公開情報に基づきます。
