
そして9月初、たった2日で4円の円高——これは「期末の利確」なのか、それとも別の何かなのか。
目次
まず、この夏のドル円に「何があったか」を時系列で
9月に入ってからの急な円高を語る前に、今年7月から今日までの流れを整理しておきます。ここが頭に入っているだけで、足元の動きの意味がまったく違って見えてきます。
【7月】164円目前 → 28年ぶりの円買い協調介入。7月に入るとドル円は一時164円に迫り、7月28日には163円91銭を付けました。ところが7月30〜31日、日米当局が円買い方向で協調介入に踏み切ります。円買いでの日米協調は1998年以来、実に約28年ぶり。7月30日だけで推計8.45兆円規模とされ、ドル円は163円台から8月3日にかけて一時155円台まで急落しました。同じ7月31日、日銀は政策金利を1.0%程度で据え置いています(賛成8・反対1、利上げ提案は否決)。
【8月】介入ショックを消化する”凪”の1カ月。8月は方向感の乏しいレンジ相場でした。値幅は156円68銭〜159円70銭とわずか3円ほど。8月21日には158円70銭まで戻し、7月末の下げ幅の3割弱を回復した水準で落ち着きます。市場の関心は、8月末に公表される介入額と9月初の外貨準備高——つまり「当局はどれだけ弾を使い、あとどれだけ残っているのか」に集まっていました。
【9月】たった2日で4円の円高。そして9月3〜4日、相場が再び動きます。9月4日には一時155円49銭まで下落し、テクニカル指標のRSIは28台と”売られすぎ”圏に。ここで多くの人が「欧米ファンドの期末の利益確定(利確)が出たのだろう」と考えました。しかし——本当にそれだけでしょうか。
そして引き金は暦(カレンダー)ではなく、政策だった。
そもそも「主語」はドルではなく円だった
最初に切り分けるべきは、動きの主語がドルなのか円なのか、です。今回、円はドルだけでなく主要通貨すべてに対して上昇しました。9月3日にはユーロ円183円14銭、ポンド円213円11銭、豪ドル円113円22銭まで全面高。一方でドル指数(DXY)は99台と軟調ながら崩れてはいません。
これは「ドルが売られてドル円が下げた」のではなく、円そのものが買い戻された動きです。もし欧米ファンドのドル円ショート利確が主因なら、動きはドル円だけに偏るはず。ところが実際はクロス円が全面高。つまり特定ペアの需給ではなく、“調達通貨としての円”全体が再評価された——これが出発点です。
「期末の利確」では説明できない4つの事実
「期末フローの利確が一巡すれば落ち着く」という見立ては、いくつもの事実と整合しません。
本当の引き金——政策トリガーと「キャリーの巻き戻し」
では何が動かしたのか。核心は、米財務省の円高圧力と、日銀の追加利上げ観測という政策トリガーです。そしてそれが、長年積み上がってきた円キャリー・トレード(低金利の円を借りて他資産で運用する取引)の巻き戻しに火をつけました。
重要なのは、円ショートの実体は先物データで見えるものよりはるかに大きい、という点です。円を調達通貨とするポジションの総量は統計上に現れる数字を大きく超えます。つまり「巨大な円ショートの巻き戻し」という直感は正しい。ただしその正体は“期末の計画的な利確”ではなく、”日本の金利が上がる=キャリーの前提が崩れる”という観測に強制的に解かれた巻き戻しです。そこに200日線割れとオプション勢のヘッジ買いが重なり、多層的に増幅された——これが実態に最も近い姿です。
さらに2026年は珍しい構図です。FRBは利下げどころか利上げの可能性を抱え、日米ともに引き締め方向。9月4日発表の米8月雇用統計が強かったことで米利上げ観測はむしろ高まりました。純粋なドル安でも純粋な円独歩高でもなく、円買いの勢いが一時的にドル側の材料を上回った”両面”の動きなのです。
相場の帰趨を決める「9月の3連戦」
結論として、この相場の行方は暦ではなく、9月に集中する3つのイベントに集約されます。オプション市場の逆イールドは、まさにこの三連戦のリスクを警戒しています。
ポジションや判断の軸は、「期末を通過したかどうか」ではなく、この3つの結果に置くのが合理的です。
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※本コラムは情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。最終的なご判断はご自身の責任でお願いいたします。
