Vol.1896:ドバイ「不動産で住む」条件が2026年に一変──2年ビザは下限撤廃、10年枠はAED200万、円安が押す“居住権+実物資産”

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埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

MLP INVESTOR COLUMN | UAE / DUBAI

「不動産を買えば、住める」――ドバイのこの図式は、長く富裕層の共通言語だった。だが2026年、その入口の形が静かに、しかし決定的に変わった。片方では条件が緩み、もう片方では基準が据え置かれ、そして未完成物件にも道が開かれた。ドル円が159円台で推移し、日銀の追加利上げ観測が強まる今、この制度改定は日本の投資家にとって、単なる海外ニュースでは終わらない。

読了時間 約5分
対象読者 円建て資産の分散、海外不動産・居住権(プランB)を検討する個人投資家
この記事で分かること 2026年のドバイ居住ビザ制度の変更点/2年ビザと10年ゴールデンビザの違い/円安・利上げ局面で日本人がとるべき資産設計の順序

2年ビザ――「最低物件価格」が消えた

2026年4月、ドバイは単独名義で申請する「2年間の不動産投資家向け居住ビザ」について、従来課していた最低物件価格 AED75万(約20万ドル) の要件を撤廃した。つまり金額の大小を問わず、自分名義でドバイに物件を持てば、2年間の更新可能な居住資格の“入口”に立てるようになった。小口の投資家や初めての購入者にとって、心理的なハードルは大きく下がったといえる。

10年ゴールデンビザ――AED200万は動かず、しかし「オフプラン」が対象に

一方、注目度の高い 10年のゴールデンビザ(不動産投資枠) は、完成物件で AED200万(約54.4万ドル) という基準を維持した。ここは緩んでいない。ただし変化もある。未完成(オフプラン)物件でも、総額が基準を満たし、かつ一定割合(目安として50%以上)を支払っていれば対象になり得る。これは60/40や80/20といった分割払いプランで、全額を一度に用意せずとも長期居住権を狙える設計が、現実味を帯びたことを意味する。

なお、この不動産投資枠の“年数”については、10年更新可能と広く紹介される一方、UAE政府の公式ポータルでは不動産枠を5年区分として案内する記述もある。申請ルートにより扱いが分かれるため、実際の年数は必ず最新の公式基準で確認したい(詳細は末尾の「留意点」参照)。

需要は数字が語る――高級不動産は前年比+26%

制度が入口を広げた背景には、実需の強さがある。2026年第1四半期、ドバイの高級不動産投資は AED877.1億 に達し、前年同期比で 26%増加 した。居住権と利回りの両方を求める資金が、明確に流れ込んでいる。制度緩和は「呼び水」ではなく、すでに動いている資金の“追い風”として設計されている、と読むのが自然だ。

居住権は、物件の“オマケ”ではない。
円建て一極から降りるための、もう一つの「出口」である。

なぜ今、日本の投資家に効くのか

タイミングが重要だ。ドル円は159円台で推移し、政府・日銀は9月または10月の利上げを視野に入れ、これまで慎重だった高市政権も、介入効果の維持という観点から早期利上げを支持したと報じられている。利上げは理屈の上では円高要因だが、市場はすでにそれを相当程度織り込んでおり、円安の構造は簡単には反転しない。

この局面で意味を持つのは、「円が上がるか下がるか」を当てにいくことではない。資産の置き場所を 通貨・国・アセット の3軸で分散しておくことだ。ドバイの不動産+居住権は、この3軸を一度の意思決定で同時に動かせる、数少ない選択肢である。

「居住権+実物資産+低税率」を一つの設計として持つ

ドバイの本質的な魅力は、次の3つが一つの購入行動で同時に手に入る点にある。

① ドル連動の実物資産
AEDは対ドルペッグ。実質的にドル建ての不動産を保有することになり、円資産一極からの通貨分散になる。
② スポンサー不要の長期居住権
雇用主に紐づかない居住資格。家族(配偶者・子)の帯同も可能で、生活の選択肢=プランBになる。
③ 個人所得税ゼロの税制
低税率環境で資産を育てられる。ただし日本居住者の納税義務は別問題で、居住実態の設計が前提になる。

重要なのは順番だ。物件を買ってから考えるのではなく、居住権・法人・相続まで含めた“出口”を設計してから物件を選ぶ。ここで初めて、制度改定は「ニュース」から「戦略」に変わる。入口が広がった今こそ、設計の巧拙が差を生む局面に入った。

⚠ 留意点
  • ビザ年数の区分に注意。不動産投資枠は10年と紹介されることが多いが、公式には5年区分とする案内もある。区分・条件は変動するため、申請前にDLD(ドバイ土地局)・公式ポータルで必ず確認を。
  • オフプラン物件は開発業者・支払い進捗により可否が分かれる。「総額が基準を満たす」ことと「登記・支払割合」の両方が要件になる。
  • 為替と金利は流動的。AED200万=約54.4万ドルの円換算額は、ドル円次第で大きく振れる。取得コストを円で固定的に捉えない。
  • 実質利回りは表面利回りと乖離する。管理費・空室・仲介手数料を含めた“手取り”で判断する。
💡 投資家への視点

制度が緩んだ今は「入りやすくなった」だけであって、「儲かりやすくなった」わけではない。入口が広がるほど、供給と競争も増える。勝敗を分けるのは物件単体の値動きではなく、居住権・通貨・税・相続をつなげた全体設計だ。円安と利上げ観測が同時進行する今こそ、円建て一極からの分散を「制度が後押ししてくれる稀な窓」と捉えたい。

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出典

  • Middle East Briefing「Dubai Property Investor Visa 2026: Property Value Requirement」(2年ビザの最低物件価格撤廃)
  • Arabian Business「UAE visa update: Major change to Golden Visa property threshold」(ゴールデンビザAED200万)
  • Gulf News「Dubai Property Visa Guide 2026」(居住ビザ区分の整理)
  • 各不動産市況レポート(2026年Q1 高級不動産投資 AED877.1億/前年比+26%、オフプラン分割払い)
  • Bloomberg/外為どっとcom(ドル円159円台、日銀9〜10月利上げ観測)

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