MLP INVESTOR COLUMN | GLOBAL MARKETS
スペースX、上場後“初決算”を読む。
売上92%増でも株が売られた本当の理由と、1.5兆ドル企業の買い方。
NASDAQ: SPCX / 2026年8月4日(現地)発表・第2四半期決算
読了時間
約8分
対象読者
米国グロース株・宇宙/AIセクターに関心のある個人投資家、ドル資産の分散先を探している層
この記事で分かること
①初決算の中身をアナリスト目線で分解 ②株価は割安か割高か ③8/6ロックアップ解除の影響 ④ジョージア定期預金×ドルコスト平均法という買い方
「史上最大のIPO」として6月にNASDAQへ上場したスペースX(NASDAQ: SPCX)が、8月4日に上場後“初めて”の四半期決算を公開した。結論から言えば、数字は市場予想を上回った。にもかかわらず、株価は時間外で急落した。売上は前年同期比92%増。それでも売られる——この一見矛盾した反応の中にこそ、この銘柄の本質と、個人投資家が取るべき戦略が詰まっている。
本コラムでは、証券アナリストが決算を読むときと同じ手順で数字を分解し、そのうえで「今の株価は割安なのか割高なのか」を検証する。さらに8月6日に迫るロックアップ解除が需給に与える影響まで踏み込み、最後に——価格が荒れるこの局面で、私たちが現実的に取れる“買い方”を提示する。
決算をアナリスト目線で分解する
まず全体像を、勢いのある部分と危うい部分に分けて押さえる。
売上高
78.1億ドル(前年同期比 +92%)。市場予想の約69.3億ドルを約13%上回る大幅ビート。前年同期は約41億ドルだった。
調整後EBITDA
約35億ドル(前年同期比 +191%)。本業のキャッシュ創出力は急改善している。
純損益
純損失 5.41億ドル。前四半期(Q1の約43億ドルの赤字)から大幅に縮小。1株あたり損失は0.09ドルで、予想の0.26ドルの赤字より“痛みは小さかった”。
設備投資(CapEx)
183.7億ドル。市場予想を約39%上回る“異常値”。経営陣は「次の2四半期も同水準が続きうる」と示唆した。ここが今回の主役である。
収益の中身は、いまや3つの事業層に分かれている。純粋な「ロケット会社」を分析するつもりで見ると、実態を見誤る。
コネクティビティ(Starlink 中心)
売上 約42.9億ドル(+66%)、四半期の純増契約 約170万件。全体の“稼ぎ頭”であり、唯一しっかり利益を出している柱。この収益で、宇宙・AI部門の赤字を埋める構図になっている。
AI(xAI・Grok・X)
売上 約25.6億ドル(+247%)。2月にxAIとXを統合して以降、最速で伸びている層。Googleクラウドとはコンピュートでのメガディール(報道ベースで月額約9.2億ドル規模)も走る。ただし、183億ドルのCapExの主因もこのAI投資である。
スペース(打ち上げ・Starship)
差し引きで概ね10億ドル前後。長期の成長ストーリー(Starship/月・火星)の中核だが、単体の売上規模はまだ小さく、“物語の資産”として評価されている段階。
アナリストの一次評価はシンプルだ。トップライン(売上)は文句なし。収益ミックスも改善。しかし、それを丸ごと呑み込むほどのキャッシュを、いま燃やしている。——これが今回の決算の骨格である。
なぜ“好決算”で株は売られたのか
答えは183.7億ドルという設備投資額に尽きる。これは1四半期で、2025年通期の投資額にほぼ匹敵する規模だ。市場が売ったのは「稼いだ数字」に失望したからではない。「これから何年、この規模で払い続けるのか」という不確実性を、改めて値付けし直したからである。
時間外で消えた時価総額は、この四半期のCapExの約7倍にあたると試算されている。つまり市場は「すでに使った183億ドル」に反応したのではなく、「同じ請求書が今後も続く可能性」に反応した。ここに、いまのAIインフラ投資全体に対する市場の神経質さ——“AIバブル”警戒——が重なった。強気の決算が、逆に「投資フェーズの長さ」を突きつけてしまった、というのが実像だ。
割安か、割高か——バリュエーションの現在地
ここからが本題だ。時間外の株価(おおむね115ドル前後)と、期末の発行済株式 約131.8億株から逆算すると、株式価値はおよそ1.53兆ドルになる。この水準を、伝統的な物差しと成長前提の物差し、両方で測る。
伝統的な物差し(PSR)
Q2売上を単純に4倍した年換算ベースで、株価売上高倍率(PSR)は約49倍。利益が出ていない企業に対して、これは明確に“高い”水準である。50%下げても「割安株」にはならない、という典型だ。
成長前提の物差し(ランレート)
経営陣は「年末までに年換算1,000億ドルのランレート(ARR)到達」を掲げる。仮に達成すれば、同じ株価でもPSRは約15倍まで低下する。“未来の数字”で見れば、高成長ハイテクとしては説明可能なレンジに入ってくる。
アナリスト・コンセンサス目標株価
市場のコンセンサス目標は約293ドル(S&P Visible Alpha)。現値からは相当な上値余地を織り込んでいる。ただしこれは、上のランレートや2030年“売上1兆ドル”構想が実現する前提の数字である点に注意が必要だ。
「今のスペースXは、伝統的な指標では割高、成長前提では説明可能——という“二重価格”状態にある。だからこそ、答えは『買うか・買わないか』ではなく、『どう買うか』になる。」
私見を整理する。一括で買うにはリスクが高すぎ、完全に無視するには物語と成長率が強すぎる。PSR49倍という現実と、コンセンサス293ドルという期待。この二つのギャップは、投資家に「時間を味方につける買い方」を要求している。そしてその判断を、目前の“需給イベント”がさらに後押しする。
8月6日、“需給の崖”が来る——ロックアップ解除の読み方
スペースXは、IPO時の浮動株がわずか4〜5%しかなかった。この極端な品薄が、上場直後に株価を135ドルの公開価格から一時225.64ドルまで押し上げた最大の理由だ。逆に言えば——その品薄が解けるとき、同じ力学が逆回転する。
最初の“崖”が、8月6日に来る。決算発表(8/4)の2営業日後だ。
8月6日:第1弾ロックアップ解除
約9.115億株(180日ブロックの約20%)が売却可能になる。直近株価で概算 約1,160〜1,230億ドル相当。なお「株価が公開価格を30%以上上回れば追加10%を前倒し解禁」という条項は、株価が公開価格割れだったため“発動せず”。
8月〜10月:段階的な“供給のしずく”
その後も約7%刻みのトランシェが数週間おきに解禁。単発の崖ではなく、継続的な供給圧力として効いてくる。
Q3決算後 → 12月8日
Q3決算を機に約28%が解禁、180日ロックアップは12月8日に全解除。年内は“供給の連続イベント”が続く。
2027年6月12日:本丸
マスク保有の約64億株は366日間ロックで、前倒し条項なし。単一イベントとしては最大の供給ポテンシャル。ここまでは“オーバーハング(上値の重し)”が構造的に残る。
重要なのは、「解禁=全員が即売却」ではないという点だ。多くの保有者はなお含み益を抱えており、実際の浮動株増加は解禁数より小さくなる。過去データでも、IPO後に出遅れた銘柄が中央値で約61%戻したという分析もある。とはいえ、8月6日に厚い売りが出ても“それを市場が吸収できるか”が問われる局面であることは変わらない。空売りも積み上がっている。短期は下向きの需給圧力が優勢——これが結論だ。
結論:どう買うか——ジョージア定期預金×ドルコスト平均法
ここまでの分析を一枚に畳むと、こうなる。①長期の物語は強い、②しかし割高、③そして目前に需給の崖。この三つを同時に満たす合理的な解が、「時間で分散して買う(ドルコスト平均法)」であり、さらにその原資を元本を守りながら生み出すことだ。
私が富裕層に勧めているのは、単純な積立ではない。ジョージアの銀行で定期預金を組み、その“金利”を原資にドルコスト平均法でSPCXを拾っていく設計である。
ステップ1:ジョージアでドル定期を組む
ジョージアの民間銀行では、USD定期で年約3%、GEL(ラリ)定期では年約10〜11%という水準が提示されている(時期・銀行により変動)。ドル建て銘柄を買うなら、為替リスクを避けやすいUSD定期が基本線となる。
ステップ2:金利“だけ”でSPCXを分割購入
元本は定期で温存し、生まれた利息の範囲でSPCXを毎月コツコツ買う。ロックアップで価格が荒れても、下がれば同じ金額でより多く拾える——需給の崖と“相性が良い”買い方だ。
ステップ3:元本は“ドル資産”として日本円から逃がす
円安局面では、ジョージアのドル定期そのものが円資産の分散先になる。株価が長期で伸びれば果実を、伸びなくても元本と金利は手元に残る——攻めと守りを同時に握る構造だ。
PSR49倍の銘柄に、退職金を一括で突っ込む——これは投資ではなく賭けだ。だが「守った元本が生む金利で、荒れた相場を時間をかけて拾う」なら、話はまるで違う。スペースXのような“高ボラティリティ×需給オーバーハング”銘柄こそ、この設計が生きる。
渡航不要——郵送でジョージア口座を開く
「海外銀行口座は現地に飛ばないと作れない」——これはもう過去の常識だ。当社(Meti Lux Partners)では、日本から一歩も出ずに、郵送でジョージアの銀行口座を開設できる。定期預金の設定まで含めて、日本語で一貫サポートする。
つまり、本コラムで示した「ドル定期を組み、その金利でSPCXを積む」という設計を、渡航ゼロで、今日から準備できるということだ。口座の使い方、定期の組み方、証券口座との連携まで、まずは公式LINEで気軽に相談してほしい。
⚠ 投資にあたっての注意
本コラムは情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買や投資手法を推奨・勧誘するものではありません。スペースX(SPCX)は現時点で純損失が続き、四半期183億ドル規模の設備投資でキャッシュを大量に消費しています。ロックアップ解除による需給悪化、AI投資の回収不確実性、単一銘柄への集中リスクは相応に大きく、株価が大きく下落する可能性があります。ドルコスト平均法は平均取得単価を平準化する手法であり、損失を回避するものではありません。ジョージアの預金金利・為替・預金保険の適用範囲は時期や銀行により変動します。最終的な投資判断はご自身の責任で、必要に応じて専門家にご相談のうえ行ってください。
💡 投資家視点
好決算で売られる相場は、しばしば「良い会社」と「良い株価」を混同した投資家をふるい落とす。今回の論点は企業の質ではなく、払い続けるコストの長さだった。だからこそ問いは「買うか否か」ではなく「どう買うか」。元本を守る金利という“弾”を用意し、需給が荒れる時間を味方につける——富裕層が高ボラ銘柄と付き合うときの、静かな王道である。
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出典
・SpaceX(SPCX)Q2 2026 決算関連報道:CNBC、CNN Business、Axios、Forbes、NPR、Motley Fool(2026年8月4〜5日)
・バリュエーション・株式数・株価水準:Investing.com、INDmoney、StartupHub.ai、TradingView(2026年8月)
・ロックアップ・スケジュール:Forbes、Motley Fool、Investing.com、SpaceX 424B4 目論見書(2026年6月12日 SEC提出)に基づく各種分析
・ジョージアの預金金利:ジョージア国立銀行(NBG)、Trading Economics、GBC(Georgian Business Chronicle)
※株価・金利等の数値は執筆時点のものであり、最新値は各一次情報でご確認ください。