Vol.1861:カイロは”昭和の東京”になる──人口3,000万都市で、安い通貨が「投資家の入り口」に変わる

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埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

INVESTOR COLUMN ── Vol.1861

〔特集コラム〕人口爆発のカイロは、半世紀前の東京と日本そのものだ ── 不動産と通貨、二つの追い風を投資家目線で読み解く

Category地域別経済情報/エジプト・日本
Regionエジプト・日本
Keywordカイロ・人口動態・新興国不動産・エジプトポンド・通貨分散
執筆/読了埜嵜 雅治(Meti Lux Partners 代表)/約8分・2026.06.27

弊社(Meti Lux Partners)はカイロに拠点を構え、エジプトの実体経済を肌で見てきました。そのカイロでいま起きていることは、投資家の言葉に翻訳すると二つの問いに行き着きます。「巨大都市の人口集中は、不動産価格に何をもたらすのか」。そして「いま割安な通貨は、投資家にとってチャンスなのか」。この二つの問いに、すでに半世紀前の日本が答えを出しています。

カイロ首都圏の「現在地」と2050年

グレーター・カイロ(首都圏)の人口は、2025年時点でおよそ2,300万人。アフリカ・中東・アラブ世界で最大、世界でも有数の巨大都市圏であり、国連の都市化見通しで世界トップ10に入る非アジア唯一の都市です。増加ペースは年率およそ2%。エジプトは国民の約95%が国土の約4%(ナイル流域)に暮らす、極端な集中構造を持っています。

国全体の人口は2026年の約1.15億人から、国連の中位推計で2050年に約1.6億人へ。首都圏に限れば、複数の学術推計が2050年に約3,000万〜4,000万人への拡大を見込みます。中心シナリオでも3,000万人を超える計算です。新首都(New Administrative Capital)、6th of October、New Cairo といった砂漠の新都市開発が、都市圏の物理的な器そのものを広げ続けています。

なぜ増え続けるのか

要因は大きく三つです。第一に高い自然増。出生率は依然として死亡率を大きく上回り、毎年150万〜200万人規模で人口が純増しています。第二に地方から首都への流入(向都離村)。雇用・教育・医療・国際機関がカイロに集中するため、人と仕事が一点に吸い寄せられます。第三に国家主導の新都市供給。政府が砂漠に計画都市を造成し、受け皿を用意することで集中をむしろ加速させています。

これは「高度成長期の東京圏」と同じ形をしている

ここで日本を振り返ります。東京圏(1都3県)の人口は1950年の約1,300万人から、2005年には約3,400万人、現在は約3,700万人へ。全国人口に占める割合は、1950年の15.5%から1990年に25%超、2019年には29%に達しました。国民の3人に1人が東京圏に住む時代です。

とりわけ高度経済成長期(1955〜70年頃)の東京圏は、毎年30万〜40万人の転入超過が続きました。重要なのはその先で、流入した若年層が結婚し新しい世帯を作ったため、世帯数は人口を上回る年率3〜6%で増加しました。この「人の流入 → 新世帯形成 → 住宅・耐久消費財の需要」という連鎖こそが、戦後日本の内需を牽引しました。いまのカイロは、まさにこの連鎖の初期〜中期にあります。

その時、日本の不動産はどうなったか

答えは明快です。上がり続けました。1960〜70年代、東京・大阪の地価は10年で2倍を超える上昇が続き、「土地は必ず値上がりする」という土地神話が国民の常識として定着しました。列島改造ブームやオイルショック後の調整を挟みつつ、1980年代後半のバブル期には都心一等地が3年で2〜3倍に。千代田区のある地点は、1986年の約200万円/㎡が1989年には約580万円/㎡へ跳ね上がりました。

背景には金融緩和や投機もありましたが、超長期の土台にあったのは紛れもなく人口の都市集中と世帯形成という実需でした。投機は「燃料」ですが、火種は人口動態だったのです。

人口が集まる場所では、土地はいずれ上がる。
半世紀前の日本がそれを証明した。問題は「どこで、どの通貨で持つか」だけだ。

通貨もまた、70年代の日本に似てきた ── 「安いうち」こそ入り口

ここまでは不動産という「実需」の話でした。しかし今回いちばん見逃せないのは、通貨です。エジプトポンド(EGP)は長らく「下がり続ける通貨」でした。2022年以降は7割超も価値を失っています。ところが、その流れが変わり始めました。

EGPは2025年に対ドルで約6%上昇。2025年4月につけた最安値(1ドル≒51.7ポンド)から切り返し、2026年6月時点では1ドル≒49.5ポンドまで回復しました。直近1か月でも5%超の上昇で、対円でも上昇傾向にあります。背景にあるのは、世界中から製造業がエジプトに集まり始め、輸出と外貨流入が増え、貿易・経常の収支が年々改善していることです。外貨準備は500億ドルを超える過去最高水準に積み上がり、ゴールドマン・サックスはポンドを約3割割安と評価。数年内の収支黒字化を見込む声もあります。

これは、まさに1970年代の日本です。固定相場(1ドル=360円)という“安い円”を起点に、日本は輸出立国として貿易黒字を積み上げ、円はそこから数十年かけて大幅に上昇しました。そして当時、安い円のうちに日本資産を買った海外投資家は、資産価格の上昇と円高の“二重の果実”を手にしたのです。通貨が安い今は、罰ではなく、入り口かもしれません。

安いうちに入る投資家が、二重の果実を得る仕組み

① 世界の製造業がエジプトに集積する

② 輸出が増え、外貨が流入し、貿易・経常収支が改善する

③ エジプトポンドに上昇圧力がかかる(通貨高へ)

④ 割安で取得した資産が「資産高 + 通貨高」の二重リターンを生む(→ 次の投資を呼ぶ)

安い為替は、いま投資家にとってのチャンスである

整理しましょう。エジプトには二つの追い風が同時に吹いています。一つは、人口増 × 都市集中 × 世帯形成という不動産の実需(=60年代の東京圏)。もう一つは、安い通貨を起点とした収支改善と通貨上昇の初期局面(=70年代の日本)です。

この二つが重なるとき、安いEGPで取得した資産は、資産価格の上昇+通貨の上昇という二重のリターンを生む可能性があります。つまり、いまの“安い為替”は海外投資家にとってのコストではなく、エントリーポイントになり得る。これが、今回の核心です。

⚠ 留意点(必ず押さえたいバランス)

直近のポンド高には、高金利に誘われた短期の証券投資(ホットマネー)も含まれます。世界的なショックで急に逆流しうるため、腰の据わった黒字化はまだ“これから”。見るべき一点は貿易・経常収支の軌道です。

一方で、製造業移転・FDI・準備高の積み上げという構造の実需が育てば、通貨高は持続的になります。ここが70年代日本との分岐点です。

水・インフラの制約(大エチオピアルネサンスダム=GERD の上流影響など)や新都市の供給過剰リスクは残り、「どの立地か」の選別は依然として決定的です。

💡 投資家への視点 ── このコラムから持ち帰るべき3つのこと

① カイロは“60年代の東京”と“70年代の日本”を同時に演じ始めている。
人口集中という不動産の実需と、安い通貨からの反転という為替の追い風が重なる、稀な局面にある。

② “安い為替”は恐れる対象ではなく、入り口になり得る。
安い円で日本資産を買った海外勢が二重に報われたように、割安なEGPは取得コストを下げる味方になり得る。

③ 大局を信じ、収支と立地で検証する。
人口動態という大局を信じつつ、見るべきは貿易・経常収支の軌道と、新都市の中の「勝つ立地」の選別。

結び ── 大局を信じ、安いうちに良い立地を仕込む

カイロの2,300万人という数字、そして上昇に転じたエジプトポンドは、単なる人口統計や為替ニュースではありません。それは「人が集まり、通貨が反転し始めた国の“入り口”」を映す鏡です。半世紀前、日本は同じ景色から数十年の資産価値上昇を経験しました。

ニュースの見出しを「新興国はリスクが高い」と読むか、「“昭和の東京”と“70年代の日本”が同時に始まっている」と読むか。その視点の差が、これからの数年の資産形成を分けると、弊社は考えております。安い為替を恐れるのではなく、収支の改善という大局を確かめながら、安いうちに良い立地を仕込む──現地に拠点を持つ弊社からの、実務的な示唆です。

“安いうち”のエジプトを、どう取り込むか

「人口も通貨も追い風だと知って、自分のポートフォリオにどう組み込めるか気になった」──そう感じた今が、検討の好機です。弊社ではエジプトの不動産紹介・現地銀行口座の開設・法人設立・視察ツアーまで、お一人おひとりの状況に合わせてご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

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主な参照情報源:国連World Urbanization Prospects 2025/World Population Prospects 2024、CAPMAS(エジプト中央動員統計局)、内閣府、国土交通省、日本不動産研究所「市街地価格指数」、Trading Economics、Daily News Egypt、ゴールドマン・サックス各種レポートほか(2024〜2026年の公表・報道に基づく)。為替・人口・地価の数値は各時点のものです。本稿は特定の金融商品・不動産の取得を推奨・勧誘するものではなく、為替・金利・不動産価格は変動します。投資・資産運用の最終判断はご自身の責任で、最新情報をご確認のうえお願いいたします。

Meti Lux Partners ── Dubai · Cairo · Tbilisi · Lagos

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