Vol.1844:ジョージア(グルジア)の個人税制は、なぜ「タックスヘイブン」と呼ばれるのか?

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埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

INVESTOR COLUMN

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Global Investment & Advisory | Investor Column

ジョージア・個人税制

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執筆者 埜嵜 雅治/Meti Lux Partners 代表取締役CEO

低税率国を探す投資家にとって、ジョージア(旧称グルジア)はここ数年で最も注目される地域の一つとなりました。理由はシンプルです。ジョージアは「領域内課税主義(territorial taxation)」を採用しており、税務上の居住者であっても、原則として国外で生じた所得には課税しないからです。本コラムでは、ジョージア国内では一切の収入がなく、配当・暗号通貨・国外投資・国外不動産・国外役員報酬など、すべての所得を国外から得ている個人を想定し、ジョージアがどこまで「タックスヘイブン」として機能するのか、そして見落としてはならない落とし穴がどこにあるのかを整理してまいります。

CATEGORY税制・国際税務
REGIONジョージア(グルジア)
DATE2026年6月3日

出発点 ── 「領域内課税主義」という設計思想

多くの国が採用する「全世界所得課税」では、居住者は所得の発生地を問わず本国に納税します。ジョージアの考え方はこれと正反対です。課税対象になるのは、原則としてジョージア国内で生じた所得(ジョージア源泉所得)のみ。国外で生じた所得は、たとえ居住者であっても、はじめからジョージアの課税ベースには含まれません。

ジョージア源泉の給与等に適用される個人所得税は一律20%のフラット税率です。しかし、所得がすべて国外源泉であれば、この20%が出番を迎えることはありません。これが「ジョージア=投資家にとってのタックスヘイブン」と語られる根拠です。

まず「税務上の居住者」になる ── 2つの道

領域内課税の恩恵を受ける前提として、ジョージアの税務上の居住者となる必要があります。道は大きく二つです。

Two Routes to Tax Residency ── 居住者になる2つの道
ルート要件の概要
183日ルール 任意の連続する12か月のうち183日以上をジョージア国内で過ごすと、その年は自動的に税務上の居住者となる(申請手続き不要)。
HNWI
(高額資産家)
プログラム
物理的滞在要件を満たさなくても居住者になれる制度。資産300万GEL(約115万米ドル)超、または直近3年連続で年収20万GEL(約8万米ドル)超などの要件を満たす必要がある。

純粋な国外所得型の投資家にとっては、物理的な長期滞在を要しないHNWIプログラムが特に魅力的に映るでしょう。なお、いずれの場合も「居住者である」という事実関係(実体)と、それを裏づける書類(バンキング、賃貸契約、滞在記録など)の整合性が、後々の安全性を左右します。

所得タイプ別 ── あなたの収入はどう扱われるか

ご想定の所得をジョージアの居住者として受け取った場合の取り扱いを、以下に整理します。

Income at a Glance ── 国外所得の課税早見表
所得の種類ジョージアでの課税ポイント
海外企業からの配当金 0%(非課税) 受動的株主として受け取る限り「国外源泉所得」となり非課税。ジョージア法人からの配当は5%源泉。
暗号通貨投資の利益 0%(非課税) 個人の売却益はキャピタルゲイン非課税、VATも非課税(2019年財務省ガイダンス)。事業・取引業(VASP)として行う場合は別扱い。
国外での投資の利益
(株式等の譲渡益)
0%(非課税) 外国企業株式の譲渡益は国外源泉として原則非課税。能動的・受動的取引の区別は現状なし。
国外不動産の家賃収入 0%(非課税) ジョージアでは再課税されない。物件所在地国で課税されるため、実効負担は所在地国の税のみ。
国外からの役員報酬 0%/20%
(要注意)
職務を国外で遂行する限り非課税。ただしジョージア国内で職務(取締役会出席等)を物理的に行うとジョージア源泉となり20%課税。

💡 投資家への示唆

配当・暗号通貨・国外株式の譲渡益・国外不動産の家賃という「受動的な投資所得」は、ジョージアにおいて原則0%です。複数資産クラスに国際分散投資を行う個人にとって、これは極めて効率的な構造といえます。唯一、明確な線引きが必要なのが国外役員報酬で、ここでは「所得の源泉はどこで職務・役務を遂行したかで決まる」という原則が効いてきます。海外法人の取締役として職務を実際に国外で遂行している限り非課税ですが、ジョージア国内に滞在しながら取締役会に出席するなど職務を国内で物理的に遂行すると、その分はジョージア源泉所得とみなされ、20%課税の対象になり得ます。

最大の落とし穴 ── 「国外から来たお金=非課税」ではない

ここが本コラムで最も強調したい点です。ジョージアの税制をめぐっては「海外から入ってくるお金はすべて非課税」という誤解が広く出回っていますが、これは正しくありません。ジョージア税法第104条は何がジョージア源泉所得に当たるかを定義しており、判断のカギは「お金の受領場所」ではなく「役務の遂行場所」です。

税法第104条第2項は、所得の源泉を判定するにあたり「金額の受領場所は考慮しない」と明記しています。つまり、報酬を海外口座で受け取っても、ジョージアに一切送金しなくても、それだけで非課税にはなりません。

⚠ 典型的なリスク

  • 国内で能動的に働いて稼ぐ──ジョージア国内に滞在しながらノートPCで能動的に働き対価を得ると、クライアントが海外でも、送金がなくても、ジョージア源泉所得とみなされ得る。
  • 外国法人を国内から運営・管理する──ジョージア国内から外国法人を能動的に運営・管理すると、恒久的施設(PE)ルールが発動し、法人として15%の利益課税+分配時5%の配当課税が及ぶ可能性がある。

言い換えれば、ジョージアが投資家にとってのタックスヘイブンとして機能するのは、所得が真に「受動的・国外源泉」である場合です。「居住しながら能動的に稼ぐ」と、この構図は容易に崩れます。

投資家が見落とすべきでないリスクと実務

制度を味方につけるには、以下の実務ポイントを冷静に織り込む必要がございます。

⚪ ジョージア個人税制の主な妙味

  • 受動的国外所得は原則0%──配当・暗号通貨・国外株式譲渡益・国外不動産賃料が、居住者でも非課税。
  • 滞在不要のHNWIルート──資産または所得要件を満たせば、長期滞在なしで税務居住者になれる。
  • 暗号通貨に手厚い──個人ウォレットでの売買益・VATともに非課税。
  • フラットでシンプル──ジョージア源泉所得への一律20%という分かりやすい構造。

⚠ 留意すべき論点

  • 申告義務は残る──税額がゼロでも、居住者は全世界所得を申告し、どれが国外源泉(非課税)かを書類で示す必要がある。HNWIステータスでも年次申告は原則必要。
  • 源泉の立証──どこで役務を遂行したか、案件やクライアントがどこに属するかを示す記録(契約書・滞在履歴・バンキングの整合性)が安全性を左右する。
  • 租税条約(DTT)の活用──本国や物件所在地国との二重課税を避ける/軽減するうえで、租税条約の有無と内容の確認は不可欠。
  • 暗号通貨の「個人 vs 事業」の線引き──個人投資は非課税だが、取引業として運営(VASPライセンス取得を含む)すると事業所得課税の世界に移る。

結び ── 「正しく組めば」極めて有利

ジョージアは、配当・暗号通貨・国外株式の譲渡益・国外不動産賃料といった受動的な国外所得に対し、居住者であっても原則0%という、世界でも屈指の税効率を提供します。国外所得だけで暮らす投資家にとって、合法的かつ実務的なタックスヘイブンと呼べる環境です。

一方で、「海外から来たお金はすべて非課税」という単純化は危険です。所得の源泉は受領場所ではなく役務の遂行場所で決まり、居住しながら能動的に働けば課税の世界に引き戻されます。投資家にとっての最後の問いは「ジョージアは低税率か」ではなく、「私が実際に用いる構造のもとで、どの所得が非課税・課税・優遇のいずれに分類されるか」です。正確なストラクチャリングこそが、この制度を味方につける鍵になると弊社は考えております。

ジョージア唯一・日本語サポート

ジョージアでの税務相談は、Meti Lux Partnersへ。

弊社は、ジョージアで唯一、日本語でサポートを行う会計事務所です。領域内課税主義のもとでの所得区分の判定、税務上の居住者ステータスの取得、配当・暗号通貨・国外不動産・役員報酬の取り扱い、租税条約の活用、そして年次申告まで──「自分のケースではどの所得が非課税・課税・優遇のいずれになるのか」を、日本語で丁寧にご案内いたします。

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主な参照情報源:ジョージア税法(Tax Code of Georgia, 第104条ほか)、Georgia Revenue Service(rs.ge)、PwC Worldwide Tax Summaries、KPMG、Andersen in Georgia、ExpatHub.GE、Legal.ge ほか(2024年〜2026年の公表情報に基づく)。税率・要件・暗号通貨やVASPの扱いは変更される場合がございます。実際の投資・税務判断にあたっては、最新の制度内容を確認ください。

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