Vol.1769:エジプトで加速する「時間を買う消費」──クイックコマースが生むアフリカ新市場の現実

〇この記事を読むのに必要な時間は約7分です。

埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

はじめに

現在、Meti Lux Partners(メティラックスパートナーズ)のエジプトオフィスでは、下記のサービスを提供をしており

・法人の登記
・銀行口座開設サポート
・エジプトの株式、国債の投資サポート
・移住サポート
・不動産の仲介、賃貸管理


特に『エジプト不動産の分割支払い×短期国債』の組み合わせは、多くの投資家様に大人気の投資スキームとなっております。

「時間を買う経済」が切り拓く、エジプト発・アフリカ消費革命

まずは、下記の記事を読んで頂ければと思います。

【SBIがエジプトのクイックコマースに投資:アフリカの大都市で「時間を買う」消費革命が進行中】
引用:Yahooニュースより

アフリカでいま起きている変化の本質は、日本のような「物流の高度化」ではないです。鍵となっているのは、時間そのものが価値として取引され始めたという点です。エジプト・カイロを中心に急成長するクイックコマースは、30分以内配送というスピード以上に、都市社会の成熟を映し出しています。

中間層の厚みが生んだ「時間価値市場」

エジプトはアフリカ第2位の経済規模を持ち、特筆すべきは安定した収入を得るフォーマル中間層の厚さです。給与振込や銀行口座が普及し、「定期的に、合理的に消費できる層」が可視化されていることが、サブスクリプション型・即時配送型サービスの成立を可能にしました。

サブサハラ諸国(アフリカ大陸のサハラ砂漠より南に位置する国々(北アフリカを除く地域)の総称で、約50の国と地域が含まれ、貧困や紛争、感染症などの課題を抱える一方で、豊富な天然資源と人口増加を背景に高い経済成長が期待される「将来の世界の成長センター」としても注目を集めています。 )が「モノを届けるためのインフラ整備」に注力する段階にあるのに対し、エジプトではすでに消費の質と効率を高める競争へと移行しています。ここに、同じアフリカでもEコマースの性質が大きく異なる理由があります。

「時間を買う層」と「時間を売る層」が支える新分業

クイックコマースを成立させたのは、都市集中、高い時間価値意識、若年失業層による労働供給、そして都市内ロジスティクスの整備という条件の重なりです。

この構造は、先進国や中東と同様に、時間をお金で買う消費者と、時間を労働として提供する側が共存する都市型経済モデルであり、エジプトはアフリカで最も早くこの段階に到達した国と言えます。

Breadfastに見る「生活インフラ化」するスタートアップ

その象徴が、エジプト発のクイックコマース企業Breadfastです。パンの配達から始まった同社は、食品・日用品・医薬品を網羅する都市生活インフラへと進化しました。

特徴は、プライベートブランドと物流・在庫・人材を内製化した垂直統合モデルにあります。ダークストアやAI需要予測を活用し、スピードと収益性を両立させている点は、世界の先進小売とも共通する戦略です。

さらにFintechへも進出し、決済・ポイント・クレジットを統合することで、将来的には「エジプト版・楽天経済圏」への発展も視野に入ります。

日本企業にとっての示唆─「支援」から「共創」へ

SBIインベストメントの出資に象徴されるように、Breadfastは単なる投資先ではなく、日本企業がアフリカ市場へ入るためのハブとしての役割を持ち始めています。

製造業、小売、コンテンツ、Fintechなど、多様な産業がこの都市型プラットフォームと連携する余地は大きいです。

重要なのは、アフリカを「課題解決の市場」としてではなく、生活を洗練させる市場として捉える視点だ。エジプトで始まった「時間価値経済」は、やがてラゴスやナイロビへと波及していく。

現地からのファクトチェック

上記の記事は、全体としては概ね正しい内容だと感じます。ただし、あえて補足をするのであれば、やや日本企業寄りの視点で書かれている印象は否めません。確かに、エジプトにおけるクイックコマース市場は、この2年で爆発的な成長を遂げました。

実際、エジプトで生活している私自身も、ほぼ毎日これらのサービスを利用しています。スーパーへ足を運ぶのは、数ヶ月に1度あるかどうか、というレベルです。

現在は、

  • 食品
  • 家電
  • 医薬品
  • 飲食店のデリバリー
  • 衣類
  • 生活必需品(トイレットペーパー、洗剤、シャンプー等)

といった、ありとあらゆる物が1つのアプリで購入でき、15〜30分以内に即日配達されます。

この生活に一度慣れてしまうと、正直なところ「スーパーに行くこと自体が時間の無駄」に感じられるようになります。

その意味では、「クイックコマース市場が爆発的に成長している」という指摘は、現地の実態と完全に一致しています。

一方で、現在の市場環境を見ると、すでに戦国時代に突入しているという印象も強くあります。

Breadfast(ブレッドファスト)以外にも、

  • GoodsMart(グッズマート)
  • Instashop(インスタショップ)
  • Talabat(タラバット)

といったサービスが存在し、私たちが日常的に使っているのは主にInstashopやTalabatで、実はBreadfastはほとんど利用していません。

この流れはエジプトに限らず、ドバイをはじめとした中東全体でも同様です。ドバイでは、TalabatやCareem(カリーム)といったサービスが広く使われています。

先の記事ではBreadfastが先行しているような印象を受けますが、現地のリアルでは新規参入が相次ぎ、もはや手数料勝負の“札束の殴り合い”状態に入っています。もちろん、それは企業側にとっては非常に厳しい競争環境です。

しかし、消費者の立場から見れば、企業同士が競争し、手数料が下がっていくこと自体は何の問題もありません。むしろ歓迎すべき状況です。

実際、Talabatで1回デリバリーを依頼した際の手数料は、20〜30EGP程度。日本円にすると、約60〜90円ほどです。

この価格感だからこそ、クイックコマース市場はここまで急速に普及し、成長しているのです。一度この利便性に慣れてしまうと、「スーパーに行く生活」には、もう戻れない。

それが、エジプトの現地で生活している者としての率直な実感です。

引き続き、海外の最新情報を追っていきます!また、最新の情報を見逃さないためにもブログの通知情報が届く『MLP公式Line』にお友達登録をお願いします!!

コメント

累計不動産取引数567

海外不動産投資、移住・進出サポート
どんなお悩みでもご相談ください

累計不動産取引数567

海外不動産投資、移住・進出サポート
どんなお悩みでもご相談ください

SNS