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スイスの銀行秘密法は別の目的もあった?
現在では廃止されてしまいましたが、かつてのスイスには銀行秘密法(Bankgeheimnis)と呼ばれる、世界でも突出した金融保護制度が存在していました。この法律の下で運用されていた銀行口座は「匿名口座」とも呼ばれ、いかなる理由があっても顧客情報を開示してはならないと定められていました。極端な例を挙げれば、国際的なテロ組織の資金であっても例外ではなかったほどです。
さらに匿名口座では、口座名義を自由に設定できるという特徴がありました。
私自身も、かつてリヒテンシュタイン(こちらも銀行秘密法が存在していた)で匿名口座を保有しており、その口座名義が「ナオミ・キャンベル」だったという話は、ブログやYouTubeでも何度か触れてきたとおりです。
そのため、多くの人がスイスに対して抱くイメージは次のようなものではないでしょうか。
- 金融国家
- タックスヘイブン
- 税金回避の拠点
- 世界中の“怪しいお金”が集まる場所
しかし、スイスが銀行秘密法を維持してきた背景には、まったく別の目的があったとも言われています。
スイスで銀行秘密法が制定されたのは1934年。
実はその以前、スイスは何度も侵略戦争を仕掛けられており、平和なイメージとは裏腹に、歴史的には“戦ってきた国”でもあります。
スイスが国際的に「永世中立国」として承認されたのは1815年ですが、その後も完全に安全だったわけではありません。ところが
1934年に銀行秘密法が制定されて以降、スイスは一度も戦争に巻き込まれていません。
これは単なる偶然ではない、という説が存在します。
銀行秘密法の施行により、スイスには世界中の富裕層、企業、政治家、そして国家レベルの権力者のお金が大量に集まるようになりました。中には、国際政治を動かせるほどの影響力を持つ人物も少なくありません。
では、ここで1つ想像してみてください。
スイスにミサイルを撃ち込むでしょうか?
おそらく撃ち込まないはずです。
なぜなら、スイスが攻撃され、金融インフラが破壊されれば、自分の資産そのものが消えてしまうからです。つまりスイスは、
「世界中の大物たちの資産を預かる」という金融戦略そのものを、国家の安全保障に転換した国でもあるわけです。
結果として、スイスは軍事力に頼らずとも安全を確保し、第二次世界大戦も、冷戦も、21世紀のテロ戦争も、直接的な戦火を免れてきた。こうした見方が存在するのです。
現在のタックスヘイブンやエジプトも侵略戦争を仕掛けづらい
スイスの例は非常に特殊ですが、実は現代の国際社会では、同じような理由で“侵略しづらい国”というものがいくつか存在します。
その代表例が タックスヘイブン と呼ばれる地域です。
これらの国や地域には、世界中の富裕層や要人、巨大企業の資金が集まっています。そのため、もし仮に侵略した場合、世界の権力者たちの資産が危険にさらされることになります。
当然ながら、政治家の背後には大手グローバル企業が存在し、その企業にも相応の利害があります。だからこそ、特に「有名なタックスヘイブン」に対して、大国が簡単に戦争を仕掛けることは実質的に困難なのです。
興味深いことに、タックスヘイブンではないエジプトも、同じ構造によって 戦争が起きづらい国 と評価されています。理由は主に2つあります。
① 世界中の企業が生産拠点を置いている
エジプトには、多くのグローバル企業が工場や事業拠点を構えています。もしエジプトが紛争状態になれば、世界中の企業が巨額の損失を被ることになります。企業が損失を被れば、その企業を支援する政治家も困る。つまり、政治的にも経済的にも「エジプトを戦争に巻き込みたくない」構造ができあがっています。
② スエズ運河という“世界経済の大動脈”
スエズ運河は、世界で最も重要な海上輸送ルートの1つです。ここが封鎖されれば、
• 世界貿易が滞る
• 物流コストが急騰する
• 主要企業が甚大な損失を受ける
という、世界規模の混乱が発生します。
だからこそ、世界中がエジプトの安定を望まざるを得ないという現実があります。もちろん、これらの国が絶対に戦争にならない、という意味ではありません。しかし「カントリーリスク」や「戦争リスク」を評価する際には、以下の基準は非常に重要です。
• その国が戦争に巻き込まれることで、
世界中の富裕層や政治家、巨大企業が困るか?
• 戦争が起きた時、損失を被る利害関係者(ステークホルダー)が多い国か?
この条件を満たす国は、大国にとって“戦争を仕掛けづらい国”になるため、相対的に戦争リスクが低い。スイスも、タックスヘイブンも、そしてエジプトも、この“世界的な利害の構造”によって安全性が高まっているというわけです。
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