もし日本政府が、全国民一人ひとりに「国債を発行せず、日銀が印刷した1万円札で400万円を配る」と発表したら、国民やマスメディア、そして世界はどのような反応をするでしょうか?おそらく、「ハイパーインフレになるのでは?」「円の価値が暴落するのでは?」「日本円は信用できない」など、ネガティブな意見が多くなるのではないでしょうか。
1億人に400万円を配れば、その総額は400兆円になります。その400兆円で海外からモノやサービスが買われれば、当然、世界も良い顔はしないはずです。なぜなら、そのお金は日銀が機械を回して供給した、言わば“根拠なき”資金だからです。
そのため、こんな政策は日本政府に限らず、世界中どこの政府も行いません。しかし、実は現在の日本では、それに極めて近いことが行われているのです。それが「日銀による国債購入」です。
すでに日銀は400兆円を超える国債を購入しており、その原資は言うまでもなく印刷された1万円札。つまり、理論上無限に購入できる状態です。それでも、現在のところ金利は上昇しておらず、円安は進んだものの暴落とは言えず、世界的にも「円は安全」という認識が依然として続いています。
「全国民に現金をばら撒く」ことと「日銀による国債購入」は、構造的には同じはずなのに、後者は受け入れられている。それは、「円は暴落しない」と多くの人が“信じている”からであり、私たちはすでに「マヒしている」と言えるのではないでしょうか。
私たちはこのような状況を、過去にも経験しています。それが、2008年のリーマンショックです。リーマンショックが起こる前の2007年、サブプライムローン問題が表面化し、一部の人々は「不動産ローンが焦げつき始めており、このままいくと大変なことになる」と警鐘を鳴らしました。
しかし、機関投資家や金融機関は「債券市場の金利は上がっていない。不動産ローン市場は正常だ。破綻などあり得ない」と楽観視していました。結果、2008年に「あり得ない」とされていたことが現実となり、市場は大パニックに陥ったのです。
この構図、今の日本と似ていないでしょうか?「日本円の暴落はあり得ない」と多くの人が信じている中、日銀は今なお国債を買い続けています。そして、それを誰も疑問に思わない。
もし、ある日突然「それは間違っていた」と分かったとき、私たちは再びリーマンショック級の混乱に直面するのではないでしょうか?
現在の日本は、人口が増えているわけでもなく、インフレ率も極端に低く、社会保障費は年々増えています。その中で経済を支えているのは「日銀による国債購入」です。果たして、これが本当に正常な状態なのでしょうか?
この問題は、単に弊社のブログのテーマを超えています。だからこそ、今一度、投資家ひとり一人が冷静に考えるべき時なのだと思います。