Vol.0072:ジョージアとロシアの軍事衝突

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埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

旧ソ連時代に独立を果たしたジョージアが、その後ロシアと良好な関係を築けてきたのか?と問われれば、多くの人が「NO」と答えるでしょう。実際、独立後にはロシアがジョージアを再び支配下に置こうとし、軍事衝突にまで発展した事実があります。

しかしこの10年においては、ジョージアとロシアの間に抜本的な解決策は見られないものの、大きな軍事衝突が再発することもなく、その兆候も見られていません。こうした経緯を踏まえた上で、弊社ではジョージアとロシアの関係は、たとえば「マレーシアとシンガポール」や「韓国と北朝鮮」のような関係に非常に似ていると感じています。

そもそも、戦争というものは感情論だけでは起きません。戦争には莫大な費用がかかるため、それを行うからには「国益という見返り」がなければ、そもそも戦うメリットがないのです。つまり、戦争とは「損得勘定」で始まるものであり、そこに合理性がなければ起こりません。

過去の例で言えば、イラク戦争もそうでした。きっかけはアメリカで起きたテロだったかもしれませんが、戦後、アメリカ企業がしっかりと石油利権をおさえていたという点から見ても、国益の観点での成果は明確でした。

話を戻すと、マレーシアとシンガポール、韓国と北朝鮮のような関係性は、決して友好とは言い難いものの、軍事衝突にまでは発展していません。それは、戦争によって国益を確保するよりも、双方の経済発展を優先するという考えが根底にあったからだと考えています。

そして近年、ロシアとジョージアの間にも、同じような構造が見え隠れしています。ジョージアではここ数年、著しい経済発展が進んでおり、トルコ・ジョージア・アゼルバイジャンの3カ国は経済協力に関する協定に署名し、いまでは3カ国を結ぶ鉄道までもが開通しています。その鉄道は今後、ロシアや中国、EUへと延びようとしており、地域全体にとっての経済的インフラとなりつつあります。

このような状況の中で、ロシアにとっては「軍事衝突を通じてジョージアを自国の支配下に置くことで得られる国益とリスク」と、「トルコ・ジョージア・アゼルバイジャンと友好関係を築いて経済協力を進めることで得られる国益とリスク」を比較した結果、「軍事衝突に踏み切るメリットはない」と判断していると考えられます。

とはいえ、ロシアとしては簡単に妥協したくないという思いも強く、結果的に軍事衝突の後も抜本的な解決に至らないまま、「経済では協力を」といった曖昧な関係性が継続しているわけです。そしておそらく、このような状態が何十年も続くのではないかと思われます。少なくとも、プーチン大統領が生きている間は。

日本とロシアの北方領土問題も似たような構造に見えます。ロシアとしては「揉めたくはない。でも妥協もしたくない。だから経済協力だけ続けよう」という姿勢です。こうした態度は、ロシア人の国民性にも通じるものがあると感じています。

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