
2026年9月12〜13日、インド・ニューデリーで第18回BRICS首脳会議が開かれ、全140項目の「ニューデリー宣言」が採択されました。「共通通貨でドルに対抗」という見出しが先行しがちですが、本質はもっと地道で、そして長い目で見ればずっと重要です。“ドルを捨てる”のではなく、“ドルがなくても回る経済圏”を少しずつ作り始めている——今回はここを、エジプト・UAEというMLP注力市場まで含めて徹底解説します。
「BRICS会議」と聞くと、多くの方が身構えると思います。難しそう、政治の話、自分の資産には関係なさそう——。ですが今回のニューデリー会議は、MLPが日々ご案内しているエジプト・UAE・ナイジェリアといった市場と、はっきり地続きです。今日は全140項目の宣言と、会議で飛び出した各国首脳の提案を、投資家の目線で必要なところだけ噛み砕いていきます。長くなりますが、この1本で「2026年のBRICSで何が起きたか」がひと通り分かる内容にしました。
目次
- 1 2026年、BRICSは「ニューデリー」で何を確認したのか
- 2 主戦場①:最大の経済テーマ「脱ドル」──ただし“共通通貨”ではない
- 3 主戦場①の本命:新開発銀行(NDB)と投資プラットフォーム
- 4 主戦場②:一方的な「制裁・関税」への明確な反対
- 5 主戦場③:AIが正式にBRICSの中心テーマに──習近平「オープンソースAI圏」構想
- 6 主戦場④:重要鉱物・エネルギー・CBAM──資源と環境の攻防
- 7 その他の実務トピック──感染症・金融犯罪・BRICS保険網
- 8 結局、何が「決まった」のか──決定済み vs 検討継続
- 9 日本の投資家にとっての意味──エジプト・UAE・ナイジェリア
- 10 関連動画
- 11 関連サービス
- 12 出典・参考
2026年、BRICSは「ニューデリー」で何を確認したのか
まず全体像です。今回はBRICSにとって第18回目の首脳会議で、議長国インドのもと、首都ニューデリーの国際会議場「バーラト・マンダパム」で2日間にわたり開かれました。テーマは「Building for Resilience, Innovation, Cooperation and Sustainability(強靭性・イノベーション・協力・持続可能性の構築)」。2006年の枠組み発足から数えて20周年という節目でもあり、9月12日には全140項目からなる「ニューデリー宣言」が採択されました。
ここで、投資家として最初に正確に押さえておきたいのが「加盟国は何か国か」です。実はこれ、報道によって数え方が割れています。
2024年1月に正式加盟:エジプト/エチオピア/イラン/UAE
2025年1月に正式加盟:インドネシア
→ 確実な正式加盟は「10か国」。サウジアラビアは2023年に招待されましたが、ロイター等の報道では正式加盟の手続きを完了しておらず、対米関係への配慮から態度を保留しているとされます。実際、今回サウジは首脳ではなく外相を派遣しました。 ※議長国インドの公式資料などは、サウジを含め「11か国」と表記しています。本稿では実態に即し「10か国+招待中のサウジ」として扱います。このほか、ナイジェリアやベトナムなど10のパートナー国が対話に参加しています。
出席者の顔ぶれも見どころでした。ホストのモディ首相に加え、ロシアのプーチン大統領、約7年ぶりにインドを訪れた中国の習近平国家主席、イランのペゼシュキアン大統領、エジプトのシシ大統領、南アフリカのラマポーザ大統領、インドネシアのプラボウォ大統領らが参加。国連のグテーレス事務総長も関連会合に姿を見せました。一方、ブラジルのルーラ大統領は国内の地方選挙対応で欠席し外相が代理、UAEとサウジも首脳ではなく閣僚を派遣しています。そして、2027年の議長国は中国。第19回サミットは中国で開催され、来年は北京が主導権を握ります。この「バトンの受け渡し」が、後述するAIの話につながっていきます。
主戦場①:最大の経済テーマ「脱ドル」──ただし“共通通貨”ではない
ここが今回いちばん誤解されやすいポイントです。SNSでは「BRICSがドルに代わる新通貨を作る」という話が定期的に出ますが、2026年の会議で共通通貨の創設が決まった事実はありません。実際に確認された方向性は、次のような地に足のついた実務です。
● BRICS各国の決済システムを相互接続しやすくする(BRICS Payment Task Force=BPTFの作業を継続)
● 目標は「高速・低コスト・アクセスしやすい・透明・安全な国境を越えた決済」
● ただし「唯一の正解(one-size-fits-all)はない」「各国の優先事項を尊重」と明記
イメージで言うと、こういうことです。いまは「エジプト企業 → ドルに交換 → SWIFT → 中国企業 → 人民元に交換」という流れが一般的ですが、これを将来的には「エジプトポンド/人民元 → BRICS系決済ネットワーク → 直接決済」に近づけていきたい。つまり「新しいBRICS紙幣を作る」というより、「ドルとSWIFTを経由しなくても国際取引できるインフラを構築する」という方が、はるかに正確な表現です。全会一致(コンセンサス)で動く組織ゆえ、宣言の言い回しは徹底して慎重。脱ドルを派手な見出しで期待していた方には物足りないかもしれませんが、実務家として見れば、この慎重さこそがリアルです。
「共通通貨でドル終焉」ではなく、「ドルがなくても回る決済網を、地道に繋ぐ」。
2026年BRICSの本質は、スローガンより一歩手前の“配管工事”にある。
主戦場①の本命:新開発銀行(NDB)と投資プラットフォーム
脱ドルの“配管”のなかで、投資家が最も注目すべきは通貨の話そのものより、資金の出し手です。BRICSには既に世界銀行に対抗する開発金融機関「新開発銀行(New Development Bank=NDB)」があり、今回の宣言でもその役割拡大が改めて重要課題となりました。
■ NDBの加盟国拡大(イランも近くNDB加盟の見通しと報じられる)
■ 新しい投資プラットフォーム(NIP)の検討継続、多国間保証(BMG)や外貨準備アレンジメント(CRA)改正の協議
■ 2026年5月にはモスクワでNDB第11回年次総会を開催
BRICSが本当に世界の資金の流れを変えるかどうかは、政治声明よりも、「NDB融資 + 現地通貨調達 + BRICS決済網 + インフラ投資」がどこまで大きくなるかで決まります。派手さはありませんが、この“配管”が太くなるほど、新興国どうし、あるいは新興国と外部投資家のあいだのお金の流れは、少しずつ摩擦が減っていきます。10年単位で効いてくる部分です。
主戦場②:一方的な「制裁・関税」への明確な反対
今回、政治色が濃かったのがここです。BRICSは、国連安保理の承認を経ない一方的な経済制裁や、WTOルールに整合しない一方的な関税・非関税措置に強い懸念を表明しました。背景にあるのは、ロシア・イランへの制裁、米国の関税政策、中国への輸出規制などです。
ここも誤読を避けたいところで、BRICSの姿勢は「米国を倒す」ではなく、「米国やEUが金融・制裁・貿易ルールを一方的に決められる構造への依存度を下げる」という考え方です。日本の投資家としては、特定の政治的立場に与するかどうかとは別に、「BRICS加盟国側は、こうした一方的措置に対して制度面で対抗の姿勢を強めている」という前提を持っておくと、今後の通商ニュースの読み方が変わります。なお本欄は特定の政治的立場を推奨するものではなく、宣言に記された各国の合意事項として客観的に紹介しています。
主戦場③:AIが正式にBRICSの中心テーマに──習近平「オープンソースAI圏」構想
今回いちばん“未来の話”として面白かったのがAIです。宣言はAIをGlobal Southの成長に活かす方向を打ち出し(AIインフラ、デジタル公共基盤、オープンソースAI、人材育成、AI安全性、データガバナンス等)、さらに会議2日目には、中国の習近平国家主席が5つの協力イニシアチブを提案しました。
▶ ② 貿易・投資円滑化:「BRICS経済特区(SEZ)パートナーシップ」の創設
▶ ③ デジタル産業協力プラン
▶ ④ 製造業での協力
▶ ⑤ 科学技術人材の育成:BRICSエンジニア育成連盟、若手交流プログラム
中国はオープンソースAIで世界最先端のモデルを多数抱える一方、米国勢はクローズド路線が中心です。ここに、習氏はBRICSという“土俵”を重ねてきました。しかも2027年の議長国は中国。北京は1年かけて、これらのAI構想を自国主導で具体化しようとしています。米国中心のAIエコシステムとは別に、BRICSのAI経済圏を作りにいく——投資家として、この長期の地殻変動は頭の片隅に置いておく価値があります。
主戦場④:重要鉱物・エネルギー・CBAM──資源と環境の攻防
通貨より地味に見えて、実は経済的インパクトが大きいのが資源です。モディ首相は今回、技術や重要鉱物(Critical Minerals)の「武器化」に警告しました。リチウム・コバルト・ニッケル・レアアース・銅・グラファイトなど、EVや電子機器に不可欠な鉱物群です。
これはBRICSと相性が良いテーマです。ブラジル・ロシア・中国・南アフリカ・インドネシアなど資源大国が名を連ねているからです。個人的には、今後のBRICSで通貨以上に影響が出るのは「資源・重要鉱物のサプライチェーン」だと見ています。エネルギー面でも、BRICSは脱炭素自体には賛成しつつ、「途上国にも欧米と同じ速度で化石燃料を止めろ」という考えには反対し、「公正で秩序ある、衡平かつ包摂的なエネルギー移行」と、当面は石油・ガスも重要な役割を持つと明記しました。さらにEUの炭素国境調整措置(CBAM)を、環境を名目にした事実上の貿易障壁になり得るとして批判。今後「EUの環境ルール vs BRICSの途上国発展論」という対立は強まる可能性があります。
その他の実務トピック──感染症・金融犯罪・BRICS保険網
● 国連・IMF改革:安保理改革(インド・ブラジルの役割拡大を中ロも支持)、IMF・世界銀行での新興国の発言権拡大を要求。「壊す」ではなく「中で議席を増やす」路線
● 感染症:統合早期警戒システムの強化、BRICS医療人材育成ネットワーク
● 金融犯罪:テロ資金・マネロン・越境詐欺・仮想資産の不正利用への協力強化(デジタル決済拡大と“セット”の防御)
● 保険:BRICS域内貿易を支える「BRICS保険レジリエンスセンター(BIRC)」構想の検討継続。西側保険・再保険への依存を減らす含意
結局、何が「決まった」のか──決定済み vs 検討継続
投資家として大事なのは、「合意した方向性」と「まだ検討段階のもの」を混同しないことです。ざっくり整理すると次のようになります。
日本の投資家にとっての意味──エジプト・UAE・ナイジェリア
ここまでを、私たちの実利に落とし込みます。最大のポイントはシンプルで、エジプトとUAEが、いまやBRICSの正式加盟国だということ。さらにナイジェリアはパートナー国で、次のアフリカ枠の有力候補とも見られています。MLPが銀行口座・不動産・法人設立でご案内してきた市場が、この巨大な枠組みの内側、あるいはその入口にいる——長い目で見れば、これは無視できません。
とりわけエジプトのように恒常的に外貨(ドル)不足が問題になる国では、次の5点が効いてきます。
ただし、冷静に線を引く必要があります。「BRICS加盟=買い」ではありません。加盟はその国の投資適格性を保証するものではなく、通貨リスクも政治リスクも従来どおり残ります。BRICS自体もコンセンサスで動く緩やかな連合で、インドと中国の緊張、ブラジル首脳の欠席、サウジの態度保留に見られるように、加盟国の思惑は一枚岩ではありません。宣言の多くも「継続協議」「方針の確認」段階で、具体的な導入スケジュールが約束されたわけでもありません。
それでも、決済網・現地通貨建て金融・開発銀行という“配管”が整っていく方向性は、新興国投資の摩擦を長期的に下げる要因になり得ます。だからこそ、スローガンとしての「BRICS」に乗るのではなく、エジプト・UAE・ナイジェリアのように成長と制度整備が同時に進む国を、通貨分散の一部として具体的な形(口座・不動産・法人)で持てるか——ここが、日本にいる私たちにとっての本当の論点です。
本稿の開催概要・出席者・合意内容・首脳提案は、2026年9月12日採択の「BRICSニューデリー宣言」および同月の各社報道に基づく参考情報で、いずれも変動・更新の可能性があります。宣言は法的拘束力を持つ条約ではなく、内容の多くは「方針」「検討継続」段階です。単一のBRICS共通通貨の採用や具体的な導入スケジュールは今回の宣言では確認されていません。習近平氏のAI構想等は“提案”であり、実装は今後の合意と各国の対応次第です。加盟国数はサウジアラビアの扱いで報道が割れており(本稿は「確実な正式加盟10か国+招待中のサウジ」として記載)、構成は今後も変わり得ます。BRICS加盟・パートナー国であることは各国の投資適格性を保証するものではありません。投資判断はご自身の状況に応じて行ってください。
ニュースの見出しだけを見ると「BRICS vs 米国」に見えます。しかし投資家目線では論点が違います。BRICSが世界秩序を変えるかどうかは“共通通貨ができるか”ではなく、①ドルを使わない貿易がどれだけ増えるか ②BRICS間決済がどれだけ便利になるか ③NDBの融資規模がどれだけ大きくなるか ④重要鉱物・エネルギーを域内でどれだけ回せるか ⑤中国・インド・ロシア・中東・アフリカを一本の経済圏としてどこまで結べるか——この5つで決まります。2026年BRICSは「通貨誕生」の会議ではなく、「ドルがなくても動く経済圏」を作り始めた会議。だからこそ実利の落とし所は、スローガンに乗ることではなく、エジプト・UAE・ナイジェリアのような国を、円だけに偏った資産の通貨分散として“具体的な形”で持てるかどうかにあります。
BRICSの枠組みと、エジプト・UAE・ナイジェリアへの具体的な入り方を整理したい方へ
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関連サービス
BRICS正式加盟国エジプトで、成長と通貨安を見据えた不動産投資を。
現地通貨・外貨の受け皿を、BRICS加盟市場につくるところから。
同じくBRICS加盟のUAEで、法人という形で市場に参加する選択肢。
BRICSパートナー国・次のアフリカ枠の有力候補で、口座という足場を。
出典・参考
・Prime Minister of India/PMINDIA「BRICS New Delhi Declaration: Building for Resilience, Innovation, Cooperation and Sustainability」(2026年9月12日)
・Press Information Bureau(PIB)/Ministry of External Affairs, India/brics2026.gov.in(第18回BRICSサミット概要・加盟国・パートナー国)
・Reuters/Al Jazeera/ABC News(首脳の出席状況・サウジの加盟状況・会議の背景、2026年9月)
・CCTV/Free Malaysia Today/Malay Mail(習近平氏のAIオープンソース圏・5イニシアチブ、2026年9月13日)
・The Hindu(BRICSのEU炭素税=CBAM批判)/The Times of Israel(イランのNDB加盟見通し)
・New Development Bank(第11回年次総会:モスクワ、2026年5月)
