Vol.1872:日本のパスポートは本当に「世界最強」なのか?──2026年最新ランキングと、投資家が本当に見るべき”パスポートの価値”

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埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

Vol.1872

日本のパスポートは本当に「世界最強」なのか?
──2026年最新ランキングと、投資家が本当に見るべき”パスポートの価値”

2026.07.13|世界のニュース/海外移住・セカンドパスポート

テーマパスポートランキング2026/モビリティ戦略
対象読者海外投資家、海外移住・セカンドパスポート検討者
読了時間約8分

こんにちは。Meti Lux Partners(MLP)代表のMasa Nozakiです。

「日本のパスポートは世界最強」──。
テレビやネットで、何度もこのフレーズを目にしたことがあると思います。ビザなしで渡航できる国の数が世界一多い、というのがその根拠です。

しかし、2026年の最新ランキングを見ると、日本は1位ですらありません。
しかも、上位グループのスコアはわずか数カ国差の”団子状態”。1位と2位の差は、たったの5カ国です。

今日は、「日本最強神話」がいつ、なぜ崩れたのか。シンガポールからアメリカまでの上位ランキングを掲載したうえで、投資家にとって本当に意味のある「パスポートの強さ」とは何なのかを解説します。

ビザなし渡航数は「旅行の自由」の指標にすぎません。
投資家にとってのパスポートの価値は、居住権・銀行アクセス・税務戦略で決まります。

2026年最新ランキング:シンガポールからアメリカまで

英ヘンリー&パートナーズ社が発表する「ヘンリー・パスポート・インデックス」の2026年版で、上位(シンガポール〜アメリカ)は以下の通りです。同スコアの国は同順位で並び、次の順位はその分だけ繰り上がります。

順位 国・地域 ビザなし
渡航先数
1位シンガポール192
2位日本、韓国187
4位スウェーデン、UAE(アラブ首長国連邦)186
6位ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、スペイン、スイス185
18位オーストリア、ギリシャ、マルタ、ポルトガル184
22位ハンガリー、マレーシア、ニュージーランド、ポーランド、スロバキア、スロベニア183
28位オーストラリア、クロアチア、チェコ、エストニア、ラトビア、イギリス182
34位カナダ、リヒテンシュタイン、リトアニア181
37位アイスランド180
38位アメリカ179

※出典:Henley Passport Index 2026年版。順位は「同スコア同順位・繰り上げ方式」。報道で「アメリカは10位」と表記されるのは、同スコア帯を1つの階級として数えた場合の順位です。数値は四半期ごとに更新されます。

ご覧の通り、1位のシンガポール(192)から、アメリカ(179)まで、その差はわずか13カ国。順位の数字こそ離れて見えますが、実際にビザなしで行ける国の数は、上位グループの中ではほとんど変わりません。旅行の実用面では体感できるほどの違いはなく、まさに”誤差”の世界なのです。

細かく見ると面白い逆転現象もあります。例えばインドでは、日本人は到着ビザ(Visa on Arrival)が使えますが、シンガポール人は事前のビザ申請が必要です。逆にキューバでは、シンガポール人はビザ不要ですが、日本人はビザが必須。「どの国に強いか」は、順位だけでは見えないのです。

日本が1位から陥落した「本当の理由」

日本は2018年から2022年まで5年連続で世界1位でした。それが今では、シンガポールの背中を追う立場です。理由は大きく3つあります。

理由1:シンガポールの”攻めのビザ外交”
シンガポール政府は、ビザ免除協定の締結を国家戦略として推進してきました。アフリカ・中南米諸国とも精力的に協定を積み上げ、2019年以降ほぼ毎年1位を維持しています。一方の日本は外交的には比較的”受け身”で、新規のビザ免除協定の獲得ペースで差をつけられました。

理由2:世界的な「電子渡航認証(ETA)化」の波
実は、この1年で上位国のスコアは軒並み低下しています。シンガポールは195→192、日本も193→187へと減少しました。これは日本が嫌われたわけではなく、英国のETA、欧州のETIAS導入準備など、「無条件のビザなし入国」が世界中で「事前オンライン申請つきの条件付き入国」へと置き換わっているためです。国境管理のデジタル化が、統計上の「自由な移動」を後退させているのです。

理由3:新興国側の「相互主義」の台頭
アフリカや中東の国々では、「自国民が先進国に行くには厳しいビザ審査があるのに、先進国民だけビザなしで受け入れるのは不公平だ」という相互主義の考えが強まっています。先進国のパスポートが自動的に優遇される時代は、静かに終わりつつあります。

むしろ注目すべきは「UAEの躍進」です

今回のランキングで、投資家として本当に注目すべきは日本の順位ではありません。UAE(アラブ首長国連邦)が日本のすぐ下、4位グループに食い込んだことです。

UAEの順位
2015年42位
2024年トップ15圏内
2026年4位(スウェーデンと同率/日本の1つ下のグループ)

わずか10年余りで42位から4位へ。UAEはこの20年で149ものビザなし渡航先を獲得し、これは全ランキング中で最大の伸びです。これは偶然ではなく、「国民のモビリティ=国力」と定義し、ビザ外交・ゴールデンビザ・金融ハブ化を三位一体で進めた国家戦略の成果です。パスポートの強さは、もはや「先進国の既得権」ではなく「国家が戦略的に作るもの」になったのです。

⚠ 注意すべきポイント

ビザなし渡航数のランキングは、あくまで「観光目的の短期滞在」の自由度です。ビザなしで入国できても、滞在できるのは通常90日以内。働くことも、住むことも、現地で銀行口座を自由に開くこともできません。「最強パスポート」を持っていても、海外に資産の逃げ道や生活の拠点を持てるわけではないのです。

投資家にとっての「本当のパスポートの強さ」とは

ここからが本題です。海外投資家の視点で見ると、日本のパスポートには、ランキングに表れない構造的な弱点があります。

弱点1:二重国籍が認められていない
日本は先進国では少数派の「二重国籍禁止」国です。第二の市民権を取得すると、原則として日本国籍の選択を迫られます。世界の富裕層が資産防衛の基本としている「複数パスポート戦略」が、日本人には制度上取りにくいのです。

弱点2:パスポート保有率は約17%
実は日本人のパスポート保有率は約17%前後と、主要先進国で最低水準です。「世界最強のパスポート」を、国民の8割以上がそもそも持っていない。この事実は、日本社会の内向き志向と、海外資産分散の遅れを象徴しています。

弱点3:渡航の自由 ≠ 資産の自由
ビザなしで187カ国に行けても、日本の税務居住者である限り、全世界所得課税・出国税・相続税最高55%のルールからは逃れられません。投資家にとって重要なのは「何カ国に旅行できるか」ではなく、「どこに住む権利があるか」「どこの銀行にアクセスできるか」「どの国の税制を選べるか」です。

では、このコラムの理屈で言えば「最強のパスポート」はどこか?

ここまで読んで、こう思った方も多いはずです。「旅行の自由だけでなく、税制や二重国籍まで含めて測ったら、順位はどうなるのか?」と。

実は、まさにその視点で作られたランキングが存在します。Nomad Passport Index(ノマド・パスポート・インデックス/NPI)です。これは、①ビザなし渡航、②市民への課税、③国際的な評判、④二重国籍の可否、⑤個人の自由、という5つの要素を総合評価するもので、まさに投資家・起業家の目線でパスポートの”本当の価値”を測る指標です。

この指標で見ると、順位は劇的に入れ替わります。2026年版のトップは以下の通りです。

順位 国(Nomad Passport Index 2026)
1位マルタ
2位ギリシャ、ルーマニア、アイルランド
5位キプロス
6位ブルガリア、チェコ

そして注目すべきは、ヘンリー指数で常に上位の日本とシンガポールが、この指標では大きく順位を落とすという事実です。理由は明快です。日本は二重国籍を認めておらず、全世界所得課税や高い相続税で「課税」項目が減点されます。シンガポールも二重国籍を認めておらず、兵役制度などで「自由」項目の評価が下がります。ちなみに、かつて高評価だったイギリスは税負担増で35位、市民に国籍ベース課税を課すアメリカは43位まで沈んでいます。

一方、トップのマルタは、EU圏の移動の自由・非居住者向けの柔軟な税制(レミッタンス課税)・二重国籍の容認・英語が公用語という条件を兼ね備えています。つまり「旅行に便利なパスポート」と「投資家にとって価値あるパスポート」は、まったくの別物なのです。日本のパスポートは前者では世界トップクラスですが、後者の観点では上位に入りません。

ちなみに、その「最強のマルタ」は”お金で買える”のか?

「マルタのパスポートは、お金さえ払えば取得できる」──そう聞いたことがある方も多いでしょう。実際、少し前まではその通りでした。しかし、2025年に状況が根本から変わりました。

マルタはかつて「投資による市民権取得(MEIN/Exceptional Services by Direct Investment)」という制度を運用しており、その要件は以下の通りでした。

項目 内容(廃止された旧制度)
政府への寄付約60万ユーロ(36カ月居住の場合)/約75万ユーロ(12カ月居住の場合)
不動産購入 約70万ユーロ以上、または賃貸 年1.6万ユーロ以上(5年間保有)
慈善寄付約1万ユーロ
居住要件12〜36カ月
取得人数の上限累計1,500人(年間最大400人)
その他認定エージェント経由のみ、厳格な資金源・素行の審査(デューデリジェンス)

総額でおよそ60万〜75万ユーロ(日本円でおよそ1億円超)。EU加盟国の中で「最速でEUパスポートが取れる制度」として世界の富裕層に人気を集め、マルタ政府には2015年以降で14億ユーロを超える収入をもたらしました。

⚠ 2025年、制度は廃止されました

2025年4月29日、EU司法裁判所(ECJ)はこの制度を「EU法違反」と判断しました。「支払いや投資と引き換えに市民権を与えるのは、市民権を単なる商取引にする行為だ」というのが理由です。これを受けてマルタは2025年7月、市民権法を改正(Act XXI of 2025)し、この”お金で買える”市民権制度を正式に廃止しました。

現在のマルタで、市民権取得の道は次に限られます。

現在の制度 内容
功績ベースの市民権
(Citizenship by Merit)
科学・文化・スポーツ・起業・慈善などで卓越した貢献をした人が対象。個別・裁量で審査され、固定の金額はなく”お金だけ”では取得できません。
通常の帰化最低5年間の実際の居住が必要。統合・素行なども審査。
永住プログラム
(MPRP)
長期の居住権は得られるが、市民権そのものではありません。

つまり、「最強クラスの価値を持つマルタのパスポートを、お金だけで買う」という選択肢は、もう存在しません。そしてこの流れはマルタだけの話ではありません。EUは「本当にその国とつながりのある人にしか国籍は認めない」という方向へ大きく舵を切っており、キプロスやブルガリアなども同様の制度をすでに廃止・縮小しています。

この変化こそ、本コラムの主張を裏付けています。パスポートは「買うもの」から「設計するもの」へ。今後は、実際の居住・事業・資産の裏付けを伴った”本物のつながり”を、時間をかけて戦略的に築ける人だけが、複数国籍という選択肢を手にできる時代になります。

そして、MLPが最もお伝えしたい結論はここにあります。本当に”最強”なのは、どこか1国のパスポートではなく、あなた自身が設計する「パスポート・ポートフォリオ」です。渡航に強い日本のパスポートは持ったまま、税制に強いUAEの居住権を加え、資産防衛としてカリブ諸国のセカンドパスポートを組み合わせる──この掛け合わせこそが、どの単一パスポートよりも強い”あなただけの最強パスポート”になります。

◆ 投資家インサイト

世界の富裕層は、パスポートランキングを「旅行の指標」としてではなく、「国家の信用力の変化」として読んでいます。UAEの42位→4位への躍進は、居住権・市民権が国家戦略として”商品化”された時代の象徴です。日本のパスポート1冊に依存するのではなく、ジョージアやUAEの居住権、カリブ諸国などのセカンドパスポートを組み合わせることで、渡航の自由に「居住の自由」「金融アクセスの自由」「税務選択の自由」を上乗せする──これが2026年のグローバル投資家のスタンダードです。

MLPでは、セカンドパスポート(第二市民権)の取得サポートをはじめ、ジョージアでの銀行口座開設・居住権取得、ドバイ法人設立によるUAE居住ビザの取得まで、「日本一極集中」から脱するための具体的な選択肢をご提供しています。ランキングの数字に一喜一憂するのではなく、ご自身の資産と人生の”モビリティ”を設計したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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出典・参考

  • Henley & Partners「Henley Passport Index」2026年版(IATA Timaticデータベースに基づく)
  • Nomad Capitalist「Nomad Passport Index」2026年版(渡航自由度・課税・評判・二重国籍・自由度の5要素で評価)
  • 欧州司法裁判所判決 Commission v Malta(Case C-181/23, 2025年4月29日)およびマルタ市民権法改正 Act XXI of 2025(2025年7月)
  • やまとごころ.jp「2026年版世界最強パスポートランキング、日本は世界2位を維持も渡航自由度は後退」(2026年1月)
  • CNN/Forbes JAPAN「世界最強パスポート」各年版レポート

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