Vol.1856:ドバイ法人税サイクル2と「年末で消える特例」──2026年内にやるべきこと

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埜嵜 雅治

執筆者埜嵜 雅治

Meti Lux Partners 
代表取締役CEO

INVESTOR COLUMN | VOL.1856 META LUX PARTNERS
Global Investment & Advisory | ドバイ・法人税/フリーゾーン

ドバイ法人税サイクル2と「年末で消える特例」──2026年内にやるべきこと

ドバイに法人を持つ方にとって、2026年は「2回目の法人税申告」の年です。そして、1回目とは前提がいくつも変わりました。期限は2026年9月30日、年末には中小企業向けの優遇措置が静かに終了します。「フリーゾーンだから0%」という思い込みのまま放置すると、想定外の課税や罰則に直結しかねません。本コラムでは、煽りではなく制度の事実に沿って、2026年内に何を確認し、何を決めておくべきかを、経営者・投資家の目線で整理してまいります。
CATEGORY税務・法人 REGIONドバイ(UAE) DATE2026年6月22日 READ約11分
Section 01 | Cycle 2

出発点 ──「2回目の申告」は1回目と何が違うのか

UAEの法人税は、2023年6月1日以降に始まる事業年度から導入されました。税率はシンプルで、課税所得のうち最初のAED37万5,000までが0%、それを超える部分が9%です。暦年(1月〜12月)を事業年度とする多くの法人にとって、最初の申告は2024年分で、期限は2025年9月30日でした。これがサイクル1です。

今回のサイクル2は、2025年1月〜12月期を対象とし、申告・納付の期限は2026年9月30日(事業年度末から9か月以内)です。一見すると「去年と同じ作業」に見えますが、実務上の前提が2つ変わりました。

1つ目はドメスティック・ミニマム・トップアップ税(DMTT)の登場です。Cabinet Decision No.142 of 2024により、UAEは連結売上7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループに対し、2025年1月1日以降に始まる事業年度から15%の上乗せ課税を適用します。サイクル2は、通常の9%とこの15%下限を初めて突き合わせる申告期になります。ただし7.5億ユーロという基準は、個人富裕層や中小法人のレンジをはるかに超える水準であり、多くの方には直接は関係しません。問題はむしろ、次に述べる「足元の特例」の方です。

Section 02 | Sunset

年末で消える「小規模事業者救済(SBR)」

2026年内に必ず把握しておきたいのが、小規模事業者救済(Small Business Relief/SBR)の終了です。これは、1事業年度の総収入がAED300万以下であれば、その期の課税所得をゼロとして扱える(=法人税を実質ゼロにできる)という経過措置です。

重要なのは2点。第一に、これは2026年12月31日までに終了する事業年度にのみ適用される時限措置であること。第二に、自動では適用されず、申告時にEmaraTax上で能動的に選択する必要があることです。「収入が少ないから当然ゼロだろう」と放置すると、選択漏れで課税対象になり得ます。

💡 SBRには「裏側のコスト」がある SBRを選ぶと、その期は課税所得がゼロになる一方で、その期の損失を将来へ繰り越せなくなる点に注意が必要です。立ち上げ期で先行投資がかさみ赤字が出ている法人ほど、「今ゼロにする」より「損失を繰り越して将来の黒字と相殺する」方が有利になる場合があります。SBRは万能の節税策ではなく、将来の損益見通しと併せて判断すべき選択肢です。

なお個人(自然人)については、UAE国内の事業による年間売上がAED100万を超えた段階で法人税の対象に入ります。給与所得、個人としての投資、個人名義の不動産投資から得られる所得は、この判定の売上には含まれません。「個人で少額の事業をしているだけ」という方も、売上規模によっては登録・申告の対象になり得る点は押さえておくべきです。

Section 03 | Free Zone

フリーゾーン0%は「自動」ではない

「フリーゾーン法人だから法人税は0%」という理解は、半分正しく、半分危険です。0%が適用されるのは、適格フリーゾーン者(QFZP)の要件を満たした上での『適格所得』に限られます。要件を満たさない所得は9%、そして要件自体を満たさなくなると話はさらに重くなります。

QFZPであり続けるには、フリーゾーン内での十分な実体(中核的な事業活動・常勤の有資格従業員・物理的資産・相応の事業支出)の維持、移転価格ルールの遵守、監査済み財務諸表の用意などが求められます。FTA(連邦税務庁)は2026年に入り、この実体・書類審査をより踏み込んで行うようになっています。登記住所やフレキシデスクだけでは「実体あり」とは認められません。

⚠ 「デミニミス基準」超過と4年間のペナルティ 非適格所得には上限(デミニミス基準)があり、非適格収入がAED500万、または総収入の5%のいずれか低い方を超えると、その期のQFZPステータスを失います。失うと、適格所得を含む全所得が9%課税となり、しかもその後4事業年度にわたってQFZPに戻れません。「少しくらいなら」と本土(メインランド)顧客との取引や非適格活動を増やすと、一度の超過が5年分の不利益につながりかねません。線引きの管理は、年度の途中から意識する必要があります。
Section 04 | Penalties

罰則は厳しくなった ──2026年4月の新ペナルティ制度

2026年は罰則の枠組みも更新されました。Cabinet Decision No.129 of 2025により、2026年4月14日から新しい行政罰則制度が施行されています。延滞に対する負担は決して軽くありません。

Corporate Tax at a Glance ── UAE法人税の基本早見表(2026年)
項目内容
標準税率0%(最初のAED37.5万)/9%(超過分)
サイクル2 対象期2025年1月〜12月期(暦年法人)
申告・納付期限2026年9月30日(期末から9か月以内)
小規模事業者救済(SBR)総収入AED300万以下で課税所得ゼロ。2026年12月31日終了期までの時限措置・要選択
個人の課税ラインUAE事業の年間売上がAED100万超で対象
フリーゾーン(QFZP)適格所得は0%/非適格は9%。デミニミス=AED500万 or 総収入5%の低い方
DMTT(大企業のみ)連結売上7.5億ユーロ以上のグループに15%下限
登録遅延の罰金AED10,000(要件充足で免除・還付の余地)
延滞・自主開示延滞は年14%/自主開示は月1%(監査通知前の早期開示が有利)
Section 05 | Action

2026年内にやるべきこと

制度を並べると複雑に見えますが、経営者・投資家が年内に押さえるべき論点は多くありません。要は「期限・特例の選択・実体・記録」の4点を、9月の申告に向けて前倒しで詰めておくことです。

Year-End Checklist ── 2026年内アクション早見表
論点2026年内のアクション
① 申告期限2025年期の財務諸表を早めに確定し、9月30日を「90日プロジェクトの締切」として逆算する
② SBRの是非総収入AED300万以下なら、ゼロ選択と損失繰越のどちらが有利かを試算してから選択
③ QFZP維持非適格収入がデミニミス基準内か年内に点検。実体(人員・拠点・支出)の証跡を整える
④ 記録・登録契約・請求書・銀行明細を7年保管。未登録なら速やかに登録し罰金を回避
⚪ 放置が最も高くつく3つの落とし穴
  • 選択漏れ──SBRもQFZPも「黙っていれば適用」ではない。申告時の能動的な選択・要件充足が前提。
  • 実体の不足──登記やフレキシデスクだけでは0%は守れない。FTAの審査は2026年に厳格化している。
  • 期限の軽視──延滞は年14%、登録遅延はAED10,000。問題が起きてからの自主開示でも月1%が積み上がる。
Conclusion

結び ──「設立して終わり」から「申告まで設計する」へ

ドバイ法人の魅力は、いまも色あせていません。しかし2026年の論点は、「いかに作るか」から「作ったあと、どう申告し、どう要件を守り続けるか」へ移りました。0%や低税率は、税率の数字そのものではなく、QFZP要件・実体・記録・期限の管理によって初めて維持されるものです。

とりわけ年末で消えるSBR、そして厳格化したFTAの実体審査は、「あとでやろう」が通用しにくい論点です。煽り見出しに振り回されず、自社の数字に沿って年内の打ち手を決めておくこと──それが、この局面で最も確実なリスク管理になると弊社は考えております。

DUBAI CORPORATE TAX | CYCLE 2

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Meti Lux Partnersは、ドバイ法人を「設立して終わり」にしません。フリーゾーン選定、QFZP要件と実体の整備、SBR選択の試算、サイクル2申告までを、日本語で一気通貫サポート。これから設立する方にも、すでにお持ちの方にも、年内に必要な打ち手を具体的にご案内します。

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主な参照情報源:UAE財務省(Ministry of Finance)、連邦税務庁(FTA)、Federal Decree-Law No.47 of 2022、Cabinet Decision No.142 of 2024(DMTT)、Cabinet Decision No.129 of 2025(罰則)、PwC/各専門事務所の2025〜2026年公表情報に基づく。税率・基準額・期限・罰則は改正や個別事情により変動する場合があり、本コラムは一般的な情報提供を目的としたものです。
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累計不動産取引数567

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