
VOL.1854 ── 「次はいつ来るのか」に、二つの時計で答える
ITバブルの崩壊、リーマンショック、コロナショック──。大きな金融危機を時系列で並べると、不思議なほど一定の間隔が見えてきます。「危機は10年に一度やってくる」と、なんとなく語られるのもこのためです。では、その拍子(リズム)が本物だとしたら、次の「頂(いただき)」と「底」はどこに来るのか。本稿は、よく知られた二つのサイクル理論を実務目線で重ね合わせ、現在地と、その先の景色を読み解きます。
弊社はドバイ・カイロ・トビリシ・ラゴスに拠点を構え、新興国を中心とした海外不動産・法人設立・国際税務をサポートしています。サイクルの議論は「当てっこ」のためではありません。どこで警戒を強め、どこで好機をうかがうか──資産配分の地図として読むためのものです。最後に、サイクルが下降局面に入るとき、新興国不動産がポートフォリオで果たす役割まで触れます。
| 約10年周期説 | ブラックマンデー(87)→アジア通貨危機(97)→ITバブル(00)→リーマン(08)→コロナ(20)。単純外挿で次の危機は2029〜2031年前後。経験則で、間隔のばらつきは大きい。 |
|---|---|
| 18.6年不動産サイクル | P・アンダーソン/F・ハリソンが体系化。平均「14年上昇+4年下落」。前回の底=2012年、次のピーク=2026年。 |
| 現在の局面 | ピーク直前の投機過熱期=「ウィナーズ・カース(勝者の呪い)」とされる。暗号資産・住宅関連の過熱が典型的なサイン。 |
| 次の底(理論値) | ピーク後の4年下落を経て2030〜2032年前後。アンダーソンは末尾「1」の年が底になりやすい歴史則も指摘。 |
| 二つの時計の結論 | 出発点が違う両理論が、「2026年に頂 → 2030年前後に底」という近い時刻を指す点が示唆的。 |
目次
「10年に一度」は本当かThe Rhythm of Crises ── Counting the Beats
まず、誰もが知る大きな危機を並べてみましょう。1987年のブラックマンデー、1997年のアジア通貨危機、2000〜2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、そして2020年のコロナショック。こうして見ると、おおむね10年弱の間隔で「何か」が起きていることがわかります。
ただし、この「約10年周期説」は注意して扱う必要があります。間隔は7年から13年までばらつきがあり、後から振り返ってパターンを当てはめている側面が否めません。あくまで「だいたいこのくらいの頻度で訪れる」という経験則であって、日付を指し示す精密な道具ではないのです。単純に外挿すれば、コロナから約10年後の2029〜2031年前後が次の警戒ゾーンということになります。
もうひとつの時計 ── 18.6年の不動産サイクルThe 18.6-Year Clock
「次の頂と底はどこか」という問いに、より具体的な年で答えてくれるのが、フィリップ・J・アンダーソンやフレッド・ハリソンが体系化した18.6年の不動産(土地)サイクルです。彼らの研究では、西側経済では平均して「14年の上昇+4年の下落」というリズムが、200年以上にわたって繰り返されてきたとされます。ハリソンが1997年の時点で2008年の崩壊を予言したことで、この理論は一躍知られるようになりました。
この理論の説得力は、危機の「原因」を金融や心理ではなく土地(不動産)価格の循環に置く点にあります。信用が不動産に向かい、価格が膨らみ、やがてピークで反転する──という構造を、彼らは歴史的に追跡しています。そしてこのモデルでの計算は、驚くほど単純です。前回の底が2012年。そこから14年の上昇を加えると、次のピークは2026年。「それだけのことだ」と提唱者は言い切ります。
いま、どこにいるのか ── 「ウィナーズ・カース」の只中でWhere We Stand Now
では、私たちは今このサイクルのどこにいるのか。理論に従えば、現在はピーク直前の「ウィナーズ・カース(勝者の呪い)」と呼ばれる局面にあたります。上昇14年の最後の1〜2年で、投機と熱狂が最高潮に達する時期です。提唱者は、暗号資産の過熱や住宅関連株の動き、銀行規制の緩和といった現象を、まさにこの末期局面のサインと位置づけています。
重要なのは、サイクルは「全員を巻き込んでからでないとピークを打てない」と表現される点です。市場は、もう投じる資金も信用も残っていない状態──つまり誰もが強気になり、懐疑論が最小化したとき──にこそ頂を打つ。だからこそ、ピークは最大の楽観とともに訪れる、というわけです。
二つの時計が指す、同じ時刻When Two Clocks Agree
ここで冒頭の二つの理論を重ね合わせてみましょう。出発点がまったく異なるにもかかわらず、結論は近い時刻に収束します。約10年周期説は「2029〜2031年に次の危機」を、18.6年サイクルは「2026年に頂 → その後4年の下落 → 2030〜2032年に底」を示唆します。リーマンから18年、コロナから6年が経過した現在、どちらの時計も『サイクル終盤』を指している──この一致こそ、投資家が立ち止まって考えるべきポイントです。
下降局面で動く資本 ── 新興国という「位相のずれ」Capital in the Downcycle
サイクルが下降局面に入るとき、資本は消えるのではなく移動します。そして注目すべきは、この18.6年サイクルが「米英を中心とした西側経済」の現象として語られている点です。ドバイ・エジプト・ジョージアといった新興市場は、先進国とは景気・不動産サイクルの位相(タイミング)がずれていることが少なくありません。
先進国の不動産が2026〜2030年に調整局面を迎えるとして、その間も人口が増え、都市化が進み、実需が積み上がる市場は存在します。エジプトの新行政首都(NAC)周辺の開発や、ドバイの継続的な人口流入はその一例です。サイクルの異なる市場を組み合わせることは、ポートフォリオ全体の「下落の同時性」を薄める分散として機能し得ます。一つの時計だけで資産配分を決めない──これが、複数のサイクルを横目に見る投資家の知恵です。
- サイクル論は確率であって確定ではない:18.6年サイクルも、1925〜1973年の約50年間はパターンが崩れた期間があったと指摘されています。提唱者自身「正確に18年ではなく平均値」と認めています。
- 「次は前回より大きい」という主張には警戒を:危機の規模を断定する言説は、恐怖を煽る商法と結びつきやすいものです。規模・タイミングの精密予測は誰にもできません。
- 新興国にもサイクルと固有リスクはある:位相のずれは万能の盾ではなく、通貨・政治・流動性リスクは別途評価が必要です。
生き残り、次の好機に備えるための「地図」である。 ── 二つの時計が同じ時刻を指す、いま。
サイクルを横目に、地域分散の地図を一緒に描きませんか
弊社はドバイ・カイロ・トビリシ・ラゴスの現地拠点から、新興国不動産・海外法人設立・国際税務を一貫してサポートします。先進国サイクルの下降局面に備えた地域分散、エジプト・ドバイ不動産の実需、ジョージアでの資産防衛──「いま何から動くべきか」を、無料相談で逆算しましょう。
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